きちんと考えて行動すれば、こういうのもいらないのに・・・

無責任とは思いませんか?


 熊本市の慈恵病院が設置した、親が育てられない子供を匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」は、10日で運用開始から5年を迎える。同病院の蓮田太二理事長らは8日に記者会見し、受け入れた子供の身元を判明させる努力をしつつ、匿名での運用を続ける考えを改めて示した。

 病院が受け入れた子供は07年5月~11年9月の約4年半で81人。蓮田理事長は会見で、「人に妊娠・出産を知られたくないという思いの強い人が来るのだから、匿名での受け入れは必要です」と強調した。更に4、5月に福岡で乳児の遺棄事件が相次いだことに触れ、「(匿名では受け入れてくれないと)誤解されていないか心配だ」とも語った。

 3月に発表された熊本市の検証では、子供の「出自を知る権利」の観点から、匿名での受け入れは認められないと結論づけた。病院も身元が分かった方が養子縁組を進めやすいことなどから、2年目以降は利用者に声をかけるなど身元判明に力を入れている。判明の割合は、07年度は65%(17人中11人)だったが、08年4月から11年9月までを見ると88%(64人中56人)にまで伸びた。

 09年まで熊本県の検証会議座長を務めた柏女霊峰(かしわめ・れいほう)・淑徳大教授は、受け入れ後に身元を特定させる現在の運営方法について一定の評価をする。匿名で受け入れても、再び実親の家庭に戻る子供が増えているためだ。「(ポスト利用の)理由は安易だったかもしれないが、親も変わっていくきっかけになっている。受け入れ後に限りなく身元不明ゼロにすることは、病院と行政の努力のしどころです」と語った。

 しかし、「ゼロ」はまだ実現せず、自身の出自を知ることができない子供は少しずつ累積している。

 匿名か実名かは、非配偶者間体外受精など生殖補助医療の分野でも問題になりつつある。卵子や精子の提供者が匿名を条件に提供しているケースがあるためだ。帝塚山大の才村(さいむら)眞理教授(児童福祉論)は「匿名での提供を受けて生まれ育った子供たちは自分の出自がわからず、苦しんでいる。だから、親が誰か、なぜ育てられないのかがわからないままとなる『ゆりかご』の匿名には反対です」。

 議論に着地点はあるのだろうか。蓮田理事長は会見で問われ、答えた。「誰から生まれたかではなく誰に育てられたかが重要と社会が理解し、養子を特別視しなくなった時に、匿名性と出自の問題はなくなるのではないでしょうか」【結城かほる】