携帯ゲームは手軽、専用機のゲームはゲームするまでの接続などが面倒なイメージがある。

でも任天堂にまた頑張ってほしいなぁ・・・



【任天堂の誤算(下)】

 通勤電車の中で、神戸市兵庫区の男性会社員(35)は携帯型ゲーム機ではなく、スマートフォン(高機能携帯電話)でゲームを楽しんでいた。「ゲームはスマホで十分。専用機だと荷物が増えるので…」。ゲーム専用機市場が縮小する一方、スマホやタブレット型情報端末などが普及し、2種類のゲームに人気が集まっている。ひとつは「ソーシャルゲーム」。ゲームを無料提供し、ユーザー同士の交流を軸に楽しむもので、市場は急成長している。ただ、高度な機能やアイテムを装備するにはお金が必要となるため、利用料が高額になるケースが続出し、社会問題化している。

 ゲーム雑誌出版のエンターブレイン(東京都千代田区)によると、家庭用ゲーム機の平成23年の国内市場は前年比8%減の4543億円と、19年に比べ3分の2の水準。前年割れは4年連続だ。スマホや携帯電話向けなどのソーシャルゲームの国内市場は、22年に前年比約4・4倍の1120億円と1千億円を突破。23年はさらに拡大傾向で、勢いの差は歴然だ。ソーシャルゲームの急成長を任天堂の苦戦に関連づける向きもあるが、岩田聡社長は「(3DSの売れ行き好調で)スマホがあれば携帯型ゲーム機は要らないという不要論が間違いと証明できた」と否定的だ。

 ソーシャルゲームは珍しいアイテムを取得し、それを電子データとして売買することで“一攫千金(いっかくせんきん)”を狙うユーザーが多い。このため、パチンコなどと競合する可能性が高く、ゲーム愛好家との重複は「限定的だろう」とアナリストの一部も分析する。それよりも懸念されるのは、もうひとつの売り切り型ゲームだ。これまで任天堂などの専用機向けにソフトを開発していたメーカーがスマホ向けに過去の人気作や新作を発売するケースが増加。しかも、価格を専用機向けよりも割安に設定しているため、高度な演出などを求めないライトユーザー層の支持を集め始めている。

 前出の会社員も「スマホ向けにリメイクされた昔のゲームでも十分楽しい」と話す。スマホに専用ソフトを導入し、ファミリーコンピュータなど過去のゲームを楽しむ層もいる。あるゲームメーカーの幹部は、開発コストの抑制や高い利益率、過去のファンという約束された需要から「今後の収益の柱になりうる」と期待を寄せる。ITジャーナリストの大河原克行氏は「スマホに過去のゲームを安価で提供するサービスは、一定の市場を確立するはず」と指摘する。一方、エース経済研究所の安田秀樹次長アナリストは「専用機への影響はあるかもしれないが、逆に専用機へのユーザー回帰につながるのでは…」と話す。

 初の営業赤字に転落した任天堂は、収益改善にむけ新作ソフトや追加コンテンツのダウンロード販売を始める方針。しかし、業界内からは「任天堂は万人に分かる価値で勝ってきた。付け焼き刃ではなく、本質的な対策が必要」(アナリスト)と厳しい声が上がる。頭脳ゲーム「脳トレ」やエクササイズ用ソフト「Wii Fit」などでゲームとは無縁だった層を取り込み、成功を収めてきた任天堂。値下げ効果で売れ行き好調な3DS、年末に発売予定の新型ゲーム機「Wii U」でも新たな価値を提案することができるのか。ゲームの王者の復活はその一点にかかっている。