小津作品の特徴のひとつに、「 正面顔の対話 」 があります。
カメラが180度切り替わり、
対話者それぞれの正面顔が、映画館の観客に向けられます。
『早春』(1956)では、
この手法がダイナミックに展開される場面があります。
海岸線をハイキングしている正二と千代(金魚)が、
トラックの荷台に乗っている場面です。
「 ハイキングしている仲間 」 と 「 トラックの二人 」 が交互に映ります。
移動撮影の切り返しがダイナミックで、
見るものを惹きつけてしまう場面。
小津監督がこの手法を使った理由が、よく分かります。