『早春』(1956年)のストーリーは、
「 不倫 」 と 「 夫婦関係の危機 」 が中心になっています。
その夫婦関係の 「 ギクシャクさ 」 を、
「 唐突な90度の切り返し 」 で表現しているのです。
まず、冒頭の寝床の場面に、
「 唐突な90度の切り返し 」 が使われます。
足元からのショットの時は、
寝ている夫婦の間に、「 水平置きの蚊取り線香 」 が見えます。
( 画像をクリックして拡大すれば、蚊取り線香が確認できます )
90度切り返すと、
蚊取り線香は隠れてしまいます。
不倫がバレ、夫婦関係が一番の危機に陥った時には、
画面は、
目まぐるしく切り返されます。
寝姿 → 90度の切り返し → 90度の切り返し → 180度の切り返し
結局、昌子が一回転してしまいます。
寝姿 ( 昌子の右顔 ) → 90度の切り返し ( 足元から )
→ ( 電灯が点く ) → 90度の切り返し( 昌子の左顔 )
180度切り返し、昌子の向きが正反対になる( 最初の画像の向きに戻る )
こんな90度や180度の切り返しでも、
形を大きく変えないように、
蚊取り線香は 「 水平置き 」 になったのでしょう。
それに付け加えて、
「 水平置き 」 と 「 縦置き 」 には、
別の意味もあるように思えます。
( 『早春』に関しては、あと2~3回書けそうです )
(注)------------------------------------------------
2013年10月25日発行、雑誌 『 ユリイカ 』 11月臨時増刊号掲載の
蓮實重彦氏と青山真治氏の対談を参考にしています。
「 ギクシャク 」 という表現や、「 夫婦関係の危機と切り返し 」 に関してなどです。
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