『早春』90度の切り返しと夫婦関係(改) | 小津安二郎『東京物語』の謎解き

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今まで誰も指摘してこなかった、小津作品の「秘密の演出」や「謎」を解明していきます。

『早春』(1956年)のストーリーは、


「 不倫 」 と 「 夫婦関係の危機 」 が中心になっています。



その夫婦関係の 「 ギクシャクさ 」 を、


「 唐突な90度の切り返し 」 で表現しているのです。



まず、冒頭の寝床の場面に、


「 唐突な90度の切り返し 」 が使われます。



      足元からのショット  →        唐突な90度の切り替えしと、寄り     

          

足元からのショットの時は、


寝ている夫婦の間に、「 水平置きの蚊取り線香 」 が見えます。


( 画像をクリックして拡大すれば、蚊取り線香が確認できます )



90度切り返すと、


蚊取り線香は隠れてしまいます。




不倫がバレ、夫婦関係が一番の危機に陥った時には、


画面は、


目まぐるしく切り返されます。


  寝姿 → 90度の切り返し → 90度の切り返し → 180度の切り返し


  結局、昌子が一回転してしまいます。

    

      寝姿 ( 昌子の右顔 ) →       90度の切り返し ( 足元から )


    →  ( 電灯が点く )  →         90度の切り返し( 昌子の左顔 )

     

   →  ( 昌子が置き上がり ) →          ( 画面を重ね合わせ )


180度切り返し、昌子の向きが正反対になる( 最初の画像の向きに戻る )


こんな90度や180度の切り返しでも、


形を大きく変えないように、


蚊取り線香は 「 水平置き 」 になったのでしょう。



それに付け加えて、


「 水平置き 」 と 「 縦置き 」 には、


別の意味もあるように思えます。


( 『早春』に関しては、あと2~3回書けそうです )




(注)------------------------------------------------

2013年10月25日発行、雑誌 『 ユリイカ 』 11月臨時増刊号掲載の

蓮實重彦氏と青山真治氏の対談を参考にしています。

「 ギクシャク 」 という表現や、「 夫婦関係の危機と切り返し 」 に関してなどです。

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