紀子の嗚咽 | 小津安二郎『東京物語』の謎解き

小津安二郎『東京物語』の謎解き

今まで誰も指摘してこなかった、小津作品の「秘密の演出」や「謎」を解明していきます。

クライマックスで、紀子は周吉と向かい合います。



紀子の首は、頻繁に曲がります。


表情や話し方も、かなり感情的です。



「私は良い人間じゃありません」(紀子)

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               「いやぁ そんなこたない」(周吉)


「昌二のことを忘れてる日が多い」(紀子)

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「このままどうなるのかと心配になる」(紀子)

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「お義母さまには申し上げられなかった」(紀子)

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               「あんたは良い人じゃ。正直で」(周吉)


「とんでもない」(紀子)

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周吉から顔を背けます。

この時、紀子の頭に鈍く光る ヘアピン を見逃してはいけません。


ヘアピン は、「 被り物 」 の一種です。

紀子は 「災い」 を抱えていたんです。

 


紀子は顔を背けたままです。
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                 周吉が動きます。


紀子は、また周吉から顔を背けます。

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                              周吉が、紀子の左腕側に座ります。


「お母さんの懐中時計を貰っておくれ」(周吉)

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「あんたが使えば、お母さんもきっと喜ぶ」(周吉)

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                  「すいません……」(紀子)


「さきざき、幸せになることを祈ってるよ」(周吉)


こう言われて、紀子は泣き出します。



涙を拭く エプロン も ハンカチ もありません。


両手で顔を覆って泣くのです。

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嗚咽する紀子は、顔を背けているわけではありません。
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                     顔を向けている先に、周吉が居るのです。



紀子(原節子)は、頭のヘアピンを見せたまま、嗚咽しつづけます。




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