東京都内の下町のとある公園では8月上旬、結婚相談所主催の男女お見合い煩悩盆踊り大会が一般見物人にも開放されて賑わっていた。
表面上、盆踊りをやってはいるが、本来の目的であるメインイベントは、男たちが好みの女の子をゲットするための婚活指名獲得選手権。
そのうち盆踊りが中断され、やぐらの下で艶やかな浴衣姿の女の子たちが横一列に並んで、身体をわずかにひねって半身に立ち、団扇で胸を押さえて色っぽく微笑む『待ちポーズ。』
男性たちは公園の端から自分のお目当ての女の子に向かってヨーイドン!で思い切り走って行き、上位3人までが今宵の女の子とのデートを勝ち取れます!
ただしひとつルールがあって、走って行くのはいいけど上半身のほうは盆踊りおどってください、だって。
かかっている唄は大東京音頭。
スタートラインに顔を赤くして並ぶ男性たち。
ピストル音が鳴らされ、各男性一斉にスタートダッシュ。
女の子めがけて猛スピードで走りながら、両手を揃えて前に出したり上にあげて手の平でシナを作ったりの上半身盆踊り。
その絶望的ともいえる奇妙な姿に周囲の見物人たちも笑うのを通り越して、何か地球上で新しい珍種の生物を見たかのような驚きの表情。
次の競技、異種短距離走には女の子たちのリクエストが入り、
「チアガール応援全力疾走やってみて。やってやって
好きだからやって
」男たちは蒼ざめながらチアガールのコスチュームを着せられて、両手に赤や白、青のボンボリみたいなの持って、ヨーイドン! で走りながら上半身は
「キャ~~~ッ
」ボンボリ振ってチアガール応援をやらかしながら女の子に向かって全力疾走。狂乱じみたその姿に周囲の見物人たちは笑うのを忘れて、同情を多分に含んだ励ましの拍手。
段々調子にのってきた女の子たちは「ねえ、紅白リレーやってみて
お願い、好きだからやってやって
」すでに諦めの境地に達したのか、男たちは能面のような無表情。
後走者に渡すためのリレーバトンが会場に運ばれて来、ルール解説の女の子がマイクを持って、幼稚園の先生が園児に言ってきかすような口振りで
「みなさんいいですか? バトンは手に持って走るのではありませんよ。上からはめ込んでおいて走るのですよ。持続力が大事ですよ。分かりましたか?」
よく分かったとうなずく下半身スッポンポンにさせられた蒼ざめた能面の男たち。
この時点で煩悩盆踊り大会の特別アドバイザーのせいたくんが両手を交差させてΧ印を出し、主催者に耳打ち。
結婚相談所所長からの合図でやぐらの下の女の子たち、一斉に走り出して能面の男たちに駆け寄り、自分を指名してくれている男の腕を両手でつかんでにっこり。
「ごめんね、ごめんね、大丈夫だった? ほんとにありがとう
大丈夫だった? 」 能面たち、正気にかえるまでに1分半かかり、女の子たちと微笑みあえるまでには更に2分間を要したものの、じきに女の子たちと腕を組んで晴々とした笑顔が復活。
とはいえ、炭鉱節がかかり出すと途端に身体が反りかえって緊張し、条件反射的に両手を揃えて前に差し出したりで、リハビリをしての正常復帰にはおよそ2週間を要する模様だって。