ミュージカル「PIANIST」観劇♬ | ~ゆるやかな時の中で~

~ゆるやかな時の中で~

宝塚とミュージカルが大好きです。

ブログタイトルと同じ小説も出版しています。

観劇ブログです。

楽天ブログに書いた内容を貼り付けます。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

博品館劇場に​T1project​上演の​「PIANIST」​を観に行ってきた。
オペラ歌手、合唱指導者としてご活躍の​古澤利人​さんがご出演である。
T1projectは、学生時代の大切な友人(故人)が携わっていたものでもある。
前作「幸せな時間」も観劇している。

期間が短く、もう千秋楽公演なのでもうネタバレも許してもらえるだろう。

​​物語は、妊娠中の妻を事故で亡くし立ち直れないピアニストの森祥二朗と、やはり事故でピアニストの父を亡くし歌が歌えなくなった元歌手志望のカフェ店員の戸川あすかが出会い、癒やされ合うが、実は妻をひいたのは彼女の父だとう事実を知るという主軸のもと、ストリートピアノによって多くの登場人物の様々な人間模様が紡ぎ出される話である。(←我ながらうまくまとめた!)(←自画自賛。)​​

衝撃的な背景だが、決して派手な話ではない。同じカフェでも市内にバリケードを築いて政府軍と戦うわけではないし戦争があるわけではないし舞台上にヘリコプターが飛んでくるわけではないし黄泉の帝王が皇妃に惚れるわけでもない。衝撃的なエピソードではあるが、皆、普通に生きている平凡な人々だ。人の内面を描く作品は、静かである。この作品もそうだった。曲と歌は時に力強く、時にささやくようである。キャストの歌唱力が高く、歌を学ぶ身として(しょっちゅう途切れるけど)、自分も家に帰って早く歌いたいと思った。

ここから先はざっくばらんに~~~~。
このカフェは、駅の改札を出てそのまま地下にあるような、そんなお店?
ストリートピアノだから、店舗を構えているわけではなさそうだし。
毎日来る常連、通りすがりの人、それぞれが悩みを抱えている。
その量が多くて最初理解するのに苦労した。
アニソン嫌いの頑固じいさんとか結婚を反対されている娘(理由は同性婚)とかその娘に恋する男とかさらにその男に恋する男とか離婚を切り出された旦那とか彼氏いなくて寂しいとか医者からの内臓と思われるエコー写真(おそらく腫瘍)を持ち呆然とする女性とか、女子校生、綺麗なお姉さん、キャリアウーマン・・・。
​たくさんおる(--)​

そして、そのカフェのオーナー、ジミー和久井役が​古澤さん​である。
台詞も歌声のような深い声で、若干見た目とギャップがある、だってテノール(=ヒーロー系)っぽいお顔立ちだから(笑)低音の包容力がすさまじい。
なんでジミーなんだろうなー。ハーフ?通称?(←多分こっち。)
彼も、偶然の再会がある。余命宣告をされたカフェのお客は、震災時に水に流され助けた人で、再会を約束した人だった。お互いに気づいたのも、ピアノのおかげ。はかない再会だったが、しないより良かったと思う。彼女は最後の生をまっとうできたのかな。

主軸の部分。
荒れる祥二郎。2年経っても彼の時間は止まっている。​中村智彦​さん、ピアノもうまい、歌もうまい、すごい。今回皆さんピアノがうまいが、中村さんも本当に上手。
2年か。その間、音楽は少しも彼を癒やすどころか、辛いだけだったのかもしれない、でも、それは、被害者だから?ずっと怒りの感情を持っていたから?とあすかの境遇を知って思った。

大好きな父を亡くしたあすか、​秋野紗良​さん。最後、伴奏なしでの歌唱は魂の叫びだった。​本当に魂が叫ぶ時って伴奏っていらないんだな​、と思った。
歌は歌えなくなったがピアノはずっと聴いていた。音楽はそばにあったわけだ。父が大好きだった、カフェのピアノ「かえるおばさん(frog aunt)」。時々、父を思い出す。父、イケメンだな・・・と思ったら​tekkan​さんだった!(←そりゃイケメンだ。)
現実は、父が死んだ時、歩道の女性をはねて死なせてしまった。彼女の名字が父と違うことが、彼女の境遇を物語る。でも、彼女はそこは封印しているように見える。大好きな父はなぜ今いないのかという悲しみの方が大きいようだ。察するに、母はもういないのではないか。今はひとりぼっちな気がする。彼女の支配する感情は、祥二朗が「怒り」だとすれば、「諦め」なのだろう

事実を知った時、祥二郎はあすかの前から消える。
あすかは、諦めることなど慣れっこだと言う。せっかくまた音楽で心がつながったのに。
しかし、彼は帰ってきた。約束通り赤いバラを持って。
最後に会ったクリスマスから、バラの生花は5月に最盛期を迎えるから、約半年。
2年に比べれば短い。良かった。

すっごく冒険しているミュージカルだなあと思った。
おそらくそれがこのプロジェクトの趣旨だろうから。
出演者がガンガンピアノを弾いたり演技しながら弾き語りをしたりということもそうだし、人の内面を描くのも非常に難しいよね。LGBTや犯罪の話もあり、盛りだくさんだったが、最後はとりあえずどれも一応の決着を見たようで良かった。
表情や立ち居振る舞いで観客に伝えなくてはいけない所が多かったが、役者さんが見事だったなあ。

あ、チンピラのヤマト君も(​須澤紀信​さん)、幸せになってほしいなあ(笑)​​​