今日、たぶん大人になってから初めて雪だるまを作った。
夜明け前から降り始めた雪がしんしんと積もって、朝のお稽古が済んでも、10時のお茶の時間を過ぎても延々と降り続けた。
「一回昼ごはんの後に雪かきして、もう一度夕方にやる感じだね」とお師匠さんが言う。
昼過ぎ、3人の元気な大人が張り切って出動したが、湿った重たい雪が10センチ以上積もるとかなり重く、15分後にはすでに汗だくでヒーヒー言っていた。おでこから汗がぽたぽた落ちてメガネのレンズについて、だんだん前が見えなくなる。100メートルくらいの坂道と、お師匠さん宅の広い敷地内を何とか除雪し終えたら、3人とも足がつるやらお尻が痛いやら、へとへとになっていた。
雪かきはそんなに好きになれないけど、久々に雪だるまを作るのは楽しかった。
胴体と頭の丸は私が作ったが、そのあと鼻をどうやってつけるか苦戦していたら、真央ちゃんが「これでそうかな。」と、何やら黄緑色の物体を持ってきた。よく見るとそれはお昼に茹でて食べたブロッコリーの茎ではないか!それを使うという発想は私にはなかった。
まるで短剣で動物をしとめるかのように真央ちゃんがグサッとブロッコリーを雪だるまの顔の真ん中に突き立てると、見事な鼻が出来上がった。(完成した雪だるまはFacebookに載せています)やっぱり、誰かと一緒に物を作るのは面白い。
この間の週末には東北に行ってきた。
何をもって不要不急の用事とするかはその人次第だと思うが、私にとっては間違いなく必要で急ぎの用事。三味線購入のための旅だった。今までずっとお師匠さんのご長男に楽器をお借りしてお稽古してきたが、小野さんにお世話していただいてついに自分の楽器を購入できることになったのだ。
出発の朝も真っ白に雪が積もっており、車の雪下ろしから始まり、「本当に宮城県まで行けるのかしらん。」と不安を抱えながら出発。
東北道に入りひたすら北上すると、福島県あたりから猛烈に雪が降り始めた。
広い平地を地吹雪のような横殴りの雪が吹き抜けて、辺りは真っ白。前の車のランプを頼りに走った。宿につく頃には幸い雪がほぼ止んでくれて、ほっと胸をなでおろす。
翌日、小野さんに仙台の三味線やさんまで連れて行っていただいた。途中、窓の外の景色に感激する。伊那谷とはまた違う、山の佇まいと民家のつくり。
三味線屋さんはとても良心的な方で、小野さんが私の事情を説明してくださったおかげで、とても良い楽器を私にも購入できる価格で用意してくださった。3本の楽器を順番に手に取って弾かせてもらい、小野さんが弾くのも聴かせていただいて、納得した。「これだ!」という1本にすぐ気持ちが動いた。
お土産までいただいてお店を辞し、帰りの道中でも小野さんからいろいろな面白いお話を伺った。なんという貴重な時間だろう。阿智までの帰り道は、親切な人々に良くしていただけることに静かに感動していた。連れて帰ったこの三味線で今後どんな表現をしていくか、自分の努力にかかっている。積もった雪に一つずつ足跡を残すつもりで、前に進んでいけたらと思う。