雨が降ってきた。雨の粒が木の葉や屋根を優しくたたくパタパタという音に耳を傾けながら、パソコンに向かっている。阿智村は夜から朝にかけてはまだまだ肌寒いので、薪ストーブには赤々と火を熾している。ゆらゆら揺れる炎をたまに眺めながら、この雨は、植え付けたばかりの長ネギにとって良いお湿りになろうし、代掻きと畔塗りを終えた田んぼも十分な水を湛えられるだろうと、そんなことばかりぼーっと考えてしまってなかなか原稿が進まない。昼間の作業でけっこう体力を消耗していたようだ。

今日は午前中いっぱい、真央ちゃんと手分けしながら地面に大きな2つの穴をひたすら掘っていた。一つは生ごみを埋けるコンポストの穴。もうひとつは、薪ストーブから出る灰を捨てるための穴だ。どちらも最近いっぱいになってきたので、古いほうを埋め戻しつつ新しい穴を掘ったのだ。

穴掘り作業にはとても思い出がある。弟子入りする前に、お師匠さんの家に初めて農作業の体験にお伺いした時の作業が穴掘りだった。当時はスコップの使い方がまったくわからず、持ち方も今思えば全然なってなかったと思う。道具はちゃんと持てないと使いこなせない。

最近は農作業をしながら、7月に開催される「和来座 第3弾 ドドンと太鼓で邪気祓い」に向けて、様々な演目の稽古を同時進で行っている。出演メンバー一人一人にとって新しい課題がある。

私も今回、鬼剣舞の踊りをはじめ、さまざまなことに挑戦する機会をいただいている中で、特に「盆舞」は今までまったく触れたことのないものでもあり、苦戦している。お師匠さんが作ってくださったピカピカのお盆は、ちゃんと手の上で落とさずに持つだけでも難しく、繰り返し落としまくった結果、ものの3日経たないうちにおんぼろになってしまった。

道具も楽器も、ちゃんと「持つ」ことができるようになったら大きな進歩ではなかろうか。

獅子頭を持つ。獅子の視線がまっすぐ前を向き、上を向いたり下を向いたりしないように持つ。お盆を安定した状態で持つ。笛を、力まないで支えながら持つ。三味線のバチを、ちょうどよい指の位置になるように持つ。すべて難しい。

明後日から始まる立川志の輔師匠の「薫風独演会」に備えて、締め太鼓を良い音に締め上げた。締め太鼓を締めるときに、締め上げ棒と太鼓を、最も力の伝わる角度で持つ。これもまだマスターできていない。今更モテたいと思いはしないが、「持てる」人になりたい。