コロナで出演や教室の仕事ができなくなり、もう2か月近くほぼずっと阿智村内にいる。この間に、ただでさえ希薄だった曜日と日付の感覚がますます薄れてしまった。今日が10日でブログの締め切りだということも読者に指摘されて気が付いたくらいだ。危ない危ない。そういえば今日は母の日でもあった。

「必要は発明の母である」と言うように何かをこの世に生み出すのが「母」なのだとしたら、男性だけどお師匠さんはここにあるいろんなものの「母」に違いない。獅子頭、権現頭、狐のお面、下駄箱、お箸、剪定ばさみを腰に下げるホルダー…この2か月でいろんな物を作り生み出し続けているお師匠さんは、こうしている今も隣の稽古場で何か作っていらっしゃる。トントンとハンマーを打つ音がさっきまでしていた。

私にとって最近は「真っすぐ」が課題になっている。真っすぐを出すのは難しい。

畑で野菜の畝を立てる時はまずは鋤で一列溝を掘り、そこにたい肥や腐葉土を入れて土と攪拌することから始める。この時に真っすぐな直線の溝を作らないと、永遠に今シーズンの畝は曲がったままだ。

鍬や鋤を打ちおろすときに、その刃の向いている方向が自分よりだとどんどん手前に曲がっていく。真っすぐに振りかぶって真っすぐに振り下ろす。そう教えていただいてからは比較的真っすぐな畝ができている。太鼓のバチと同じみたいだ。

 鋸で板を垂直に真っすぐに切り落とすのも難しい。板に桟木を固定するビスをインパクトドライバーで真っすぐにねじ込むのも、自分では垂直にしているつもりでも実際にはそうなっていないことが多い。真っすぐに見るのも難しい。

今日は昼間は雨で外の作業はできなかったので、稽古場内の桶太鼓や道具類を収納するラックと棚を作った。お師匠さんの設計図に従って、濡れないようにベランダで材木を鋸でギコギコと刻んでいく。

コの字の棚の脚になる分厚い板を、垂直に切らなくてはならなかった。少しでも斜めになると、立てた時に脚が安定しなくなる。「難しいから俺がやろうか。」とお師匠さんが助け舟を出してくださったのだが、自分でやりたくて「いいです。やります。」と断った。それが間違いだったとわかるのにそう時間はかからなかった。やっぱり素直に代わっていただいた方が良かったかもしれない。ちょっと斜めになった棚の脚を後から真っすぐにはできない。これからは素直に、一直線、ためらわずに鋸をお渡しするようにしよう。