一昨日、昼神温泉「鶴巻荘」で「和力&三人十色 豪華共演」と題した公演があった。鶴巻荘さんは毎年和力のコンサートを主催してくださっている。今回は豪華共演という名の通り、和力の演目と、木村さん、小野さん、内藤さんによる珠玉の音楽ユニット「三人十色」による音楽を同時にお楽しみいただける贅沢な舞台だった。

お師匠さんは、内藤さんのセットの太鼓、木村さん、小野さんの演奏がなるべくどの席のお客様からもよく見えるように、何カ月も前からどのように舞台を設営するか考えていた。テーブルを何個置きたい、ドリンクコーナーを設けたい、料理を提供するための動線も確保しなくてはならないという旅館さんのご都合もあり、事前の現場での打ち合わせとシュミレーションは数回に渡り念入りに行われた。

「ステージから遠いテーブルのお客さんが『見えにくい』『自分たちはよい席ではない』という疎外感を感じないようにしたい。」と、前日仕込みの段階で予定よりも更に両側に舞台を延長することを決めた。

お師匠さんはお客さんだけでなく共演者に対しても、リラックスして舞台に臨めるように細やかな気配りをされる。その配慮は私たちのような弟子にも平等で、コーヒーを買いに行きますというとご自分のお財布を渡してくださり、「何かスイーツも買っていいですよ。」と優しいのだ。

この他にも正面から舞台を観ることはできない代わりに、私たち弟子ならではの役得というものがある。楽屋で出番を待つ時間の過ご方や、楽器の準備をどのようなタイミングでされるのか、ソデの中がどうなっているのか全てを見ていられるということだ。

今回のプログラムでは内藤さんのソロの次が三人十色の「天高く」だった。小野さんが三味線を持って控室からいらっしゃって、幕の後ろで出るタイミングを計っていた。演奏が終わってわっと拍手が起こる。小野さんが出ていく瞬間に、お師匠さんがパッと幕をどけて介錯し、小野さんが出るとまたサッと閉めた。その一連の動作と集中にプロフェッショナリズムを感じる。また、道具にも魂が宿るというが、お師匠さんのコマやお面、小野さんの三味線、木村さんの笛、内藤さんの太鼓をじっと見ていると、長年の芸の積み重ねと、持ち主と道具や楽器との間の信頼関係さえ感じられるから不思議だ。素晴らしい舞台のお手伝いができてとても嬉しいのと、目指す道のりのあまりにも長いことに改めて身の引き締まる1日だった。