「誰もいないからそこを歩く」
これは海援隊の曲である。ヒット曲でもないから、ファンの他には知られていないだろう。
ボーカルは武田さんではなく、敬愛する中牟田さんがとっている。だから自分にはなおさら、心に響いてくるのだ。
中牟田さんの訥々としたボーカルは、ギターを抱えて津々浦々を旅してきたフォークシンガーの憂いを感じる。
自分もいつか、こうありたいと思って生きてきた。
新しい年を迎え、ヤブさんとのギターユニット「古道具屋裏通り店」では「誰もいないからそこを歩く」をカバーすることになった。
「古道具屋裏通り店」は人にウケるかどうかというよりも、こだわりの曲しか演奏しない。だから、徹底的に練習して納得できた曲でないと人前に出さない。当たり前のことだけれど、これは我々の矜持である。
年頭にあたり、こう思う。
これまで「フォークシンガーおだしょう」としても、自作自演を自分のペースでひっそりとやってきた。
聴いていただく目の前の方に、人生の機微を込めた言葉を届けたい。
ミュージシャンとして、一人の弾き語りと「古道具屋裏通り店」の二足の草鞋をこれからも続ける。
職業としては、人の心に寄り添えるソーシャルワーカーでありたい。
誰もいないからそこを歩く。
