薄紅の秋桜が、ひっそりと咲いている山の中の一軒家に、おばあさんが一人、ひっそりと暮らしている。おばあさんの庭に、薄紅のコスモスもひっそりと咲いていた。それじゃ、また来ます。そう言って、おばあさんと別れた。おばあさんは九十三才。いつまで会えるだろう。おばあさんがいなくなっても、秋には薄紅のコスモスがきっと咲く。けれどもう僕は、おばあさんの家を訪ねることもない。ひっそり咲く、おばあさんのコスモスを見ることもない。