卒業を間近に控えた高校三年の冬。俺が、まさに発車しようとする刹那、ヤツはそう言った。
「う~ん…本当に初めて?それにしては、テクニックあるね」

俺は黙ってヤツの言うことを聞いていたが、その通りだ。さすがにプロ。とうに見抜かれていた。
「うん、唸るほど上手いね。スムーズだ」
俺はゆっくりと、スタートさせた。
「教習の初めっから、エンストさせずに発車できるなんてね。びっくりしたよ」
運転免許を取りに行った先で、教官がそう言った。
そりゃそうだろう。大きな声じゃ言えないが、無免許で運転したことが何度もあるから。
当時は、今とは違ってAT車は普及していなかったし、ましてやAT限定免許などあるわけがない。
だから、いきなりマニュアル車から教習が始まる。
今日は長距離運転をした。
ハンドルを握りながら、その時を思い出す。
AT車に慣れきった俺に、熱い魂が甦ってきたぜ。
あ~あ。またやっちまった。
しょうもないブログになったな。