中学に入った頃の夢をみた
夢の中身は当時、本当に起こったことなので、だからこそ鮮明だった
中1の春のこと
入ったばかりの部活で、顧問の先生から「調査票」なるものを渡され、なるべく早く書いて提出するよう言われた
調査票の内容は、自分の住所、氏名、生年月日のみならず、父母の名前、生年月日、職業まで記入するようになっていた
その時は疑いを抱くことなく、素直に書いて提出した
数週間後、ミーティングの場で部員の名簿を渡された
名簿は先生の手書きで、調査票の内容がそのまま載っていた
つまりは部員のみならず、親の名前や生年月日、職業まで全て載っているのだ
あいうえお順に並んだ名簿を上から順にみていくと、父親、母親の欄が空いていたり、職業欄には「無職」と書いてある部員がいる
この名簿を見たとき、僕は怪訝な思いを抱いた
「お前の父さん、仕事してないの」
隣にいた同級生に、先輩部員がつぶやいた
彼は黙っていた
ミーティングが終わった後で、彼は顧問の先生に、父親は無職ではないことを訴えた
顧問の先生は、それでは何の仕事をしているのかと聞いたが、彼は「あんま、っつうか、マッサージっつうか、そんなの」と返事をした
彼の父親は数年前に眼の病気で視覚障害が残ったが、一生懸命に勉強してつい先日、自宅に治療院を開いたのだという
調査票の時点では無職だったかもしれないが、今は違う
彼の調査票は誰が記入したのだろうか
彼なのか
母親なのか
もしかすると父親かもしれない
ともかくも、その三人の内の一人が書いたのには間違いあるまい
どんな気持ちで「無職」と書いたのだろう
今更ながら思うが、部員名簿に父母の名前や生年月日、ましてや職業まで載せる目的は何か
父子・母子家庭や無職は、それだけでスティグマ化されている現実を、顧問は認識していたのか
そんなことには鈍感な時代や地域特性があったことは、否めない
しかし今尋ねてみても、顧問はそんなことなど忘れているだろう
さて、それから
中学校では、夏休みになっても「入学おめでとう」の垂れ幕が校舎に掛かったままになっていた
垂れ幕は、くすんで汚れていた