深い森のみどり色の朝 -28ページ目

深い森のみどり色の朝

人間界の涙は、まだ夜が明ける前の森の中に朝露になって降りてくる。夜のうちに、漆黒の魔法使いが呪文を唱えてくれるからね。 ぼくは、その朝露を瓶に詰めて、シャンプーを作る。特に六月の早朝に。

 


深夜、魔女はぐらぐらと熱湯を煮たのだった。 魔女の鍋はこの魔女がとても清潔好きだということが分かるくらいに良く磨かれている。満月の夜や、キルギスの夜。そして魔女は月の素敵な晩によく、この黒い鍋でそれは上等な魔法の酒や、薬を作るのだ。

グラグラ、グツグツとお湯は煮立ったということを告げた。 この年の夏は暑く、 誰もが疲れ果てた。そんな真夏の山の深夜に吹く風を誰も知るまい。 風は涼しく、心地よく、そして星はチカリと開かれた空に輝いている。 日中とは打って変わった空間があった。

魔女はそんな空間にただ一人座り、カップ焼きそばに熱湯を注いだ。真夏でも、湯気は白くくねりながら夜空へ上がっていく。 魔女はそんな湯気を眺めながら、5分待った。

できあがったカップ焼きそばを魔女は暗がりで星を眺めながら食べ始めた。ちゅるちゅるという呪文は、静かな空間で魔女を取り囲んでは弾けて星になった。

魔女は星増やしの儀式をしながら、人差し指と親指を大空に伸ばして夜空の星でお弾きをして遊ぶ。 星はぶつかるたびに、大丈夫、大丈夫と魔女に言った。

魔女が去った後、カップ麺の空の皿が、山の風に吹かれてカランと揺れて 草が静かにざわざわと波打った。

朝がもうじき始まる。