まさか深海から破壊された船体が引き上げられるとは思ってもいませんでした。
カナダの潜水調査船(Odysseus 6K)は凄いですね。
側面に立派なロボットアームが有るので細かな作業が出来る様です。
フロントエンドは、アクリルのビューポートが外側に吹っ飛んで行ったようで留め金も残っていません。
リアは回収しなかったのかビデオからは判別できません。
Raw video: Wreckage from implosion of Titanic-bound sub arrives in Canada
さて、世界各国の有人深海潜水艇の圧力隔壁は全て球形です。
オーシャンゲート社のタイタンは、常識を覆した船型をしています。
2017年12月17日 GeekWire 記事より
Titan(Cyclops 2)建造中の様子
フィラメント巻き炭素繊維製の軽量圧力容器と透明なアクリルビューポートを備えたチタンドーム
円筒形の圧力容器の内部は、細かい金属のメッシュの後ろにムード照明で仕上げられている。後部に船体外側後方カメラに接続され、仮想ウィンドウ(およびパイロットのバックアップカメラ)として機能する高解像度ビデオモニターがある。
モニタの壁の後ろに2台の高性能コンピューターサーバーを含む電子機器とモータ制御システムが収納される。これらのサーバーは、潜水中にカメラ、ソナーセンサ、レーザースキャナ等のデータを保存する。
なお潜水中母船との交信は、5k~10kbitでデータを送信する音響通信システムに成る。
透明なアクリルビューポート
アッセンブリー場全体
The making of Titan: Oceangate's submersible capable of taking people to the Titanic
Titanの最も注目すべき技術革新は、フィラメント巻き炭素繊維製の軽量圧力容器だそうです。
Watch The Manufacturing Process That DOOMED OceanGates Titan To Fail. But It NEVER Had To Happen.
圧力変化の起きやすい円筒部分は、厚さ5 inch(12.5cm)炭素繊維で出来ています。
製造方法はフィラメントワイディング(FW)製法でフープ巻きなので、円周方向は強いが垂直方向の強度はほぼアクリル強度、製造時のバラツキで強度の弱い所に圧力が集中する・・・と思われる。
特にリングと炭素繊維複合材との連結部の作業はぞっとします。
そして、本当に設計強度が出ていたのだろうか?炭素繊維の引張強度は高いので内圧が高い場合引張に成るが逆では引張に成らない。アクリルで固定しているから変形は引張に成るとでも思ったのか?
当初は、全体を炭素繊維で作ろうとしていた様です。
下の動画は、1/3スケールモデルの製造方法と耐圧試験の様子。
Cyclops Next Gen: New Hull Design and Testing
1/3スケールモデルで実験3000m相当でビューポート部の炭素繊維複合材が破損
多分ビューポートの強度を保った巻き方が出来なかった為?チタンに変更したと思われる。
相当厚いのでチタン加工時の熱変形は考慮しなくて良いので加工は楽に成ります。
航空宇宙は、薄いので注意しないと厚みが均一に成らないそうです。ロケット部門の人が嘆いていました。
破損が疑われている透明なアクリルビューポート
この部分は、実験で内側に破損しているので慎重に設計製造していると思われます。
アクリルビューポート厚さは7.5inch(19.05cm)有るそうです。
実験時に問題の有った所は、案外破損しないものです。
根拠は有りませんが?きっとこちらが原因ではないと思います。
良い解析ビデオが有りましたので貼って置きます。
TITANic Sub Disaster - In Depth Animation Analysis
フィラメントワイディング(FW)製法
フープ巻きは,円筒軸へほぼ直角に繊維を巻取ることで,内圧に対する強度分布を円周上に形成する.一方,ヘリカル巻きは,マンドレル回転軸に対して任意の角度(20~80[deg])で対象繊維をらせん状に巻取る手法である.FW成形法は曲面を有する軽金属タンク形状の補強用途などへの適用が一般的であり,このようなCFRP成形体としては,さまざまな方向の応力に対抗する強度が要求される.ところが,繊維材料強度は繊維方向にのみ適用されるため,円筒軸にほぼ直角に巻取るフープ巻きだけではねじりや曲げ応力に抗する十分な強度を実現できない.そこで,繊維をマンドレルに対して,強度設計上考慮すべき応力方向へ繊維配向しながら巻取るヘリカル巻きが必要となる。(計測自動制御学会産業論文集 Vol. 2, No. 2, 9/18 2003引用)
実際の水素タンクなどは、フープとヘリカル巻きを併用して全方向の強度を高めている様です。
せめて併用していればもう少し持ったのではないでしょうか?
今回は、24回目の航海だったようです。
欧米の革新的な製品は、得てしてこの様な常識を免脱した物が少なく有りません。
何でこんな素人みたいなと思うのですが・・・。
作業している人たちの表情を見ていると何の疑問も持っていないようで・・・。
日本も最近同じなんですがチェック機構が働かない。
以上です。