Ⅵ.次世代電池編
目次
1. リチウム空気電池
2. マグネシュウム電池
3. ナトリュウム電池
4. リチウムイオンキャパシタ
5. リチウム銅電池
6. さまざまな次世代電池の仕組み
番外:新しい鉛系バッテリ
1.リチウム空気電池
空気電池は、正極活物質として、空気中の酸素を使うので正極の重量はほとんど負極活物質だけになり、圧倒的にエネルギ密度が高くなる。
従来型リチウム空気電池では、酸化リチウムが生成されてしまっていた。
酸化リチウム(Li2O)が触媒の表面をコーティングするとそれ以上、反応が進まなくなっていた。
空気電池は、負極区域と正極区域を固体電解質で区切る、この固体電解質は、リチウムイオンだけを通し、水酸化イオンやプロトン(水素イオン、H⁺)、水は通さない。
負極では、金属リチウムがリチウムイオン(Li⁺)として電解液に溶け出します。
正極では、空気中の酸素と水が反応して、水酸化イオン(OH⁻)が生じます。
水酸化イオンとリチウムイオンが反応して出来るのは、水酸化リチウム(LiOH)で、水に溶けるため電極の目詰まりは起きない。
電解液はアルカリ性なので、安価な金属酸化物(酸化マンガンなど)が使える。
正極活物質の性能は、連続で50000mAh/g負極に使う金属リチウムの比容量は理論的に3800mAh/gですから、電池全体の比容量もこれを超える事は無い。
リチウムイオン電池は120〜150mAh/gなので、大幅な性能向上となる。
2.マグネシュウム電池
電池の能力は、酸化還元反応によって決まります。簡単にいうと、金属のイオン化傾向に大きく左右されます。イオン化傾向の強い順に金属元素を並べると、リチウム(Li)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)…・となる。マグネシュウムは、二価の陽イオンを発生するので一価のリチウムの倍の電荷を発生する。
マグネシュウム空気一次電池
電圧は1.6V(理論値2.76V)、負極の容量は2000mAh/g(理論的2290mAh/g)マグネシウム電池は理論上およそ7.5倍の性能を発揮するという。さらに、コンセントから充電するのではなく、電池に必要なマグネシウムは現在のガソリンスタンドやコンビニエンスストアで買って入れ替えるだけ。数分で電池がリフレッシュされ、現在のガソリン自動車とさほど変わりない感覚で、長距離のドライブも可能になる。
マグネシュウム二次電池(多価カチオン電池)
二次電池のほうは開発が始まったところで産総研が世界で初めて正極電極(硫黄ドープ金属酸化物)を開発した。
l 正極容量 200mAh/g (理論値:2190mAh/g、3.08Ah/1cc)
l 維持率 ほぼ100%(5サイクル後)
3.ナトリュウム電池
これまで、鉄系の層状酸化物としては、ナトリウム鉄酸化物(NaFeO2)が知られていましたが、蓄電量が少なく、一般的なリチウムイオン電池の正極材料の6割程度の蓄電量しか得ることができませんでした。
最近、鉄を50%ほどマンガンに置き換えることで、従来とは異なる層状構造(Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2)の合成に成功し、これにより蓄電量を増やすことができた。正極材料はこのようにありきたりの元素を用い、レアメタルフリーでいける見通しをつけた
現時点での課題は負極である。
「黒鉛の電気容量が360 mAh/gであるのに対し、スクロースを焼結した炭素材料(ハードカーボン)では最も性能に優れるものでも300 mAh/gにすぎず、2割程度劣っている」300 mAh/g という負極の容量は従来に比べれば1.2倍に向上させているが、実用化のためにはさらに高い放電容量が求められる。これをいかに解決するかは今後の研究課題でもある。とはいえ正極にレアメタルを使わずに済むのなら、材料コストの点で圧倒的に優位に立つ。リチウム電池の原料に用いられる炭酸リチウムの価格が1トンあたり5000米ドルであるのに対し、炭酸ナトリウムのそれはわずか150米ドル(2012年11月初旬時点)と桁違いに安い。さらにコバルト、ニッケル、銅などを用いるリチウムイオン電池に比べ、それら高価な資材の拘束からも解放される。
以上です。