電子の基礎

 

1.電子とは

u 電気の振る舞いを利用したもの

電子の流れを利用して信号を強くしたり、電波にしたり、磁気に変換したりして利用.

例:電子制御コントローラ、ラジオなど

 

1)原子の構造と性質
原子は、+(正)の電荷をもつ原子核を中心として、その周りに-(負)の電荷をもつ電子が定められた軌道上をまわっています。この軌道上の電子は原子核との間で吸引力が生じている為、外に飛び出すことはありません。

しかし、これは図1-1のように原子が単独で存在している場合の話であって、原子が複数個集まって物質を構成している場合は、電子は対になっている原子核に引きつけられると同時に、他の原子核からも吸引力を受けるようになります。

そして同時に周囲の電子からは反発力を受けるようになります。この影響は原子核から最も遠い軌道をまわっている電子(最外殻電子:価電子)が一番強く受けます。

 

物質内の原子は互いに影響を及ぼしあっている為、結果的に最外殻電子が対になっている原子核からの束縛を離れて、物質内を自由に動き回れる状態になる場合があります。このように自由に動き回れる電子のことを“自由電子”といいます。

ところで、原子は最外殻軌道に8個の電子を持った状態が安定した状態であり、この状態になろうとする性質を持っています。そこで、図1-1のように最外殻軌道に1つの電子を持つ場合は、それを放出して結果的に最外殻軌道に8個の電子を持つ状態になろうとします。

従って、このような原子から成る物質では、それぞれの原子が互いに影響し合って図1-2のように各原子が1個ずつ電子を放出する事になり、物質内は多数の自由電子が存在する状態(電気を良く通す状態)になります。このような物質を“導体”といいます。導体には金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、鉄、ナトリウム等があります。

 


最外殻軌道に8個の電子を持つ原子で構成された物質は、それぞれの原子が安定な状態にある為、図2-1に示したように、自由電子が存在しない状態(電気を通さない状態)になります。又、最外殻軌道に4個の電子を持つ原子で構成された物質では、各原子が互いに4個の電子を共有しあって、結果的に図2-2に示したように最外殻電子が8個になった安定した状態になります。この場合も自由電子が存在しない状態(電気を通さない状態)になります。このように各原子が安定した状態になり、自由電子が存在しない物質を“絶縁体”といいます。絶縁体には天然ゴム、ガラス、セラミック等があります。

l  実質的に最外殻電子が8個になって安定した状態になっている物質の中には、物質を構成する複数の種類の原子が互いに電子を共有しあっているものもあります。(例:二酸化シリコン)

l  2-2のような電子構造をもった物質には“半導体”も含まれます。半導体とは抵抗率が導体と絶縁体の中間の値を示す物質です。半導体には、シリコン、ゲルマニウム、テルル、セレン等があります。

 

1-2の物質では元々物質内に自由電子が存在していますが、図2-3においても、外部から光や熱等のエネルギーが与えられると、拘束されていた最外殻軌道の電子がそのエネルギーを得て軌道から飛び出す事があります。するとその結果、自由に動き回れるようになった電子(自由電子)と、その電子が飛び出したあとの電子の抜け殻(正孔:ホール)が出来ます。

このホールは、-の電荷を持つ電子が失われた物なので、+の電荷を持つと考えることが出来ます。よって、本来は自由電子を持たない物質でも、光や熱等のエネルギーを与えれば、自由電子やホール(電子を要求する穴)が出来る事になります(電気を通す状態になります)。

 

 

2)物質のエネルギーバンド

拘束されている電子に、どれだけのエネルギーを与えれば自由に動けるようになるのかを図で表したものを“エネルギーバンド”(図3-1)といい、帯域は3つ分かれている。

 

 

3-2(a)の物質の場合は、エネルギギャップに応じたエネルギを外部から与えると、(b)のように、自由に動けなかった価電子帯の電子がエネルギをもらって伝導帯に移り、自由電子とホールが出来る。

 

 

u  金属、半導体と絶縁対の違い

 

() 導体

導体は外部からエネルギーを与えなくても、原子間の相互作用によって物質内に自由電子が存在しますので物質のエネルギーバンドには禁止帯は存在しない。

() 半導体

半導体のゲルマニウムやシリコンの結晶は、最外殻電子が8個あって安定した状態になっている為、外部からエネルギーを与えないと物質内に自由電子とホールが生成されません。従って、半導体のエネルギーバンドは禁止帯を持つ絶縁体としての構造となりますが、ガラスやゴム等のような物質と比較すると、エネルギーギャップの値(禁止帯の幅)が小さくなっています。従って、低温下では一般の絶縁体と同様に非常に大きい抵抗値を持ちますが、常温(25℃)のもとでは価電子帯から電子が飛び出して自由電子とホールが生じます。

() 絶縁体

絶縁体は外部からエネルギーを与えないと物質内に自由電子とホールが生成されない。従ってこのような物質のエネルギーバンドには禁止帯が存在する。

 

u  エネルギー帯

 

原子核が原子1個の場合

量子力学によると,原子の周りにはいくつかの軌道があり,軌道によってエネルギーが決まっています.1つの電子はどれかの軌道に属するため,電子が取れるエネルギーはとびとびな値になります.
原子1個の場合について,電子のエネルギーに着目し,概念的に表すと下図のようになります.

 

この図で示してあるように,電子が取ることのできるエネルギーを,「エネルギー準位」(または単に「準位」)と呼びます.エネルギー準位は言わば電子が座ることの出来る「座席」だと思ってもらえば,イメージしやすいでしょう.電子はエネルギー準位,つまり「座席」があるところには座れますが,座席のないところに座ることは出来ません

 

() 導体

導体に電圧が印加されると、自由電子が電源の+極に引きつけられて移動し、物質の内部には電源の-極から電子が供給される事になります。結果として、図中のオレンジ色の矢印の向きに電流が流れます。

(b、c)半導体・絶縁体

本来、半導体や絶縁体の内部には自由電子は存在しないので、電圧を印加しても電流は流れません。しかし、物質に外部から、電圧を印加(自由電子が発生するだけのエネルギー)すると、物質の内部では自由電子とホールの移動が起きるので、結果として、図中のオレンジ色の矢印の向きに電流が流れます。(*ホールは+の電荷を持っていると見なせるので、電圧が印加されると電源の-極に引きつけられると考えられます。)

 

 

以上です。