5EMC対策の基本 

1)電磁波の常識

    EMC性能」達成において,工程的・期間的にいちばんしわ寄せを受けるのが検証/対策の段階である。設計図面の段階では,曖昧な部分が有っても期間短縮は可能である。しかし,製品(または試作品)が組み上がってきた段階では,それ以前の事情はどうあろうと性能を達成しなければならない。経験の積み上げ,要領の良しあし,着意の有無が,対策の期間を左右する要素として極めて大きい。経験がものを言う領域です。

 

 

1)  問題部位発見のための手段

    エミッションを抑えるためのEMI対策の効率化
測定用プローブを用いて,電磁波を可視化できるようにする。23はその一例である。電線を巻いた「ループ・プローブ」と,コンデンサを使った「接触プローブ」を自作して使えばよい。絶対値測定には適さないが,放射の原因個所は探すには十分である。場所を探すことが重要

 

プローブで電磁波を拾い,スペアナ(スペクトラム・アナライザ)に入力する。スペアナなら所望の周波数範囲を一望できるので,対策の効率を高めることができる。

この段階で絶対値を知ることは不要であり,感度が低くてもプローブを測定個所に近づけて補うことができるので,安価なスペアナでよい。

 

2)  問題部位・ルート究明

l問題部位を突き止め、伝搬ルートも究明する。

    磁界測定用ループプローブ
ボードに実装されたデバイスやケーブル等からの電磁波の放射状況をスペクトラムアナライザ測定し、EMIの初期診断及び対策に用いる。

 

 

    磁界プローブ法による非接触電流測定システム
半導体、高密度実装プリント基板、部品、モジュールなどのノイズ測定 

 

 

3)  効果を確認しながら1か所ずつ

図(A):2カ所の雑音源から同じ強度の雑音を受信していた例:  対策で1カ所原因が取り除かれた時、電磁雑音源が半分(3dB低下)になるが、雑音自体にレベル変動があったり、周囲の環境が変化すると、3dBの低下を見逃してしまうことがあるので十分注意すること。

 

 

図(B):原因が多数でレベルが同じ例
個々の原因に対して順次,対策を実施していくが,(a)と同様に1dBの低下に気付かないことが多々ある。距離(例えば3m)を離したアンテナで測定すると,対策の効果が極めて把握しにくいので、直近で個々に計測すること。

 

 

図(C)は,原因が多数あり,各レベルが同じでない例
普通,電磁雑音のレベルは雑音ごとにケタ違いに異なる。大きい雑音源があると,小さい雑音源を対策したときに効果を認識できないことが多い。想定部位のEMC対策は,1カ所ずつプローブで効果を確認しながら,虱潰しに徹底的につぶしていくこと。

 

 

対策は、コストや商品としての実現性など気にせず過剰気味に,徹底的にやる。直すこと!直ることが先!

EMC対策の目処が付いた時がEMC対策のスタートです。直ることを確認してから、実装できるか?低コストか?を検討し対策する。対策は設計基準化を図る。

 

4)    問題部位近傍で対策

l  対策は,問題(原因)部位に,近い所で施す。

    イミュニティの場合は誤動作している回路素子近くで対策する。元から断てば,低コストになる。(エミッションの場合は放射源)

    放射イミュニティの対策は“隠れたアンテナ”があると,外部から電磁波が侵入しやすくなるので、そういう個所を見つけ対処する

    信号発生器(必要により増幅器を併用)から前記の「ループ・プローブ」「接触プローブ」を介して電磁雑音を印加すると,問題の個所を探すことができる。このように外部からの電磁波的な侵入を模擬しながら,1カ所ずつ対策していく方法は極めて有効である。ただしこの場合においても,イミュニティの耐性が機器全体でいったん規定レベルに達した後に,個々の対策部位が有効であったかどうかを確認していくことになる。この段階において,初めて対策が必要な部位が確定できる。

 

5)    放射は、伝導で対策

l  放射イミュニティの対策は、伝導に置き換えて対策

    放射試験は,

1)測定の不確実性が大きくなりやすく,かつ問題部位を特定しにくい。

2)放射イミュニティの測定現場は強電磁界であり,測定員は電波暗室などの外部からしか観測できないため,直接機器がいじれず非能率になる,という欠点があるためである。

 

 

6)    直達波と反射波の干渉

    電波暗室の床面が電波を反射するEMC用の電波半無響室の場合、測定結果には図1に示すような直達波と反射波の干渉が影響する。

    FDTD法(有限差分時間領域法)はアンテナ問題や散乱問題など各種分野に応用されています.この方法は差分法を時間領域まで拡張しているため,解析における最終的な結果のみではなく,結果に至るまでの時間領域における電磁界の変化を見ることができるという特徴があります. FDTD法は,アルゴリズムが比較的簡単であり多く利用されています.

  

埼玉県産業技術総合センター研究報告:電磁ノイズ測定の再現性に関する研究より抜粋

    ノイズ源の位置が異なる場合、直達波と反射波の経路の差が変化するため、測定結果は全く異なったものとなる。車の場合は床置きは無いと思われるので常に反射波が入ると考えられる。

  

参照:基本から学ぶEMC実践技術 から抜粋しています。詳しくは下記URLでお勉強してください。

http://tech.nikkeibp.co.jp/search/?q=%E7%80%AC%E6%88%B8%E4%BF%A1%E4%BA%8C

 

以上です。

ノイズ対策は、電磁気現象の基本的なことが頭の片隅に入ってないと解決できません。

そもそもユニットは問題ないものが納入されます、しかし取り扱いや環境そして何個ものユニットが同時に動き出した時初めて顕在化するものです。最初は全く見当もつかない所から対策が必要になります。基本的なところばかりです退屈でしょうが何と無くわかる状態にしておくことが重要です。