ピロン。

メッセージアプリの通知音で目が覚める。


今朝はやけに、窓の外が明るい。
カーテンから差し込む光は、もっと柔らかなものじゃなかったっけ。


ベットの淵にあるデジタル時計は8:00を示していた。
夫はもう出社した後だ。
几帳面な彼の希望で、私たちは寝室を分けている。夫の出社は早く、私はシフト制で生活リズムが合わない。「そのほうがお互いゆっくり眠れるやん」

そう言われた時は、その通りだと思った。




スマートフォンを開くと、メッセージは夫から。
「今日、友達家族のとこいく。飯いらんよ」



メンバーは誰だろう。
家に行くなら、みっちゃんたちかな。
私も誘って欲しかったが、きっと退勤時間が遅すぎてお家にお邪魔すると迷惑になるに違いない。
理由をつければ、いくらでも丸くなる。今の私には、それくらい造作もない。




まぁいいか。
眠い目を擦りながら、リビングへ。
4人がけのテーブルに、昨日作った筑前煮、肉じゃがの作り置きがタッパーに入り整然と並んでいる。
自分で作ったものだが、時間が経って見てみると、なんだか美味しく見えない。



その一つを手に取り、電子レンジに入れた。






電子ケトルに水を入れる。

コーヒーの香りが立ち上るのを想像するだけで、少しだけ心が落ち着く。

朝のコーヒータイムだけは、私の生活の中で絶対に揺るがないものだ。


この時間に、いろんなことを反芻し、妄想するのが好きだ。

現実的に実現可能かというジャッジをなくし、こんな風になれば嬉しいな、こんな風に出来たらいいのにな、ということを想像し、心のときめきを生き返らせる大切な時間。






コーヒーを飲み終えて、筑前煮を口にする。

和と洋は全く合わないと痛感するが、自分のためだけに素敵なバランスの良いご飯を作るほどまでには、日常に余裕がない。

合わなかったって、別に困りはしないのだ。