安倍首相の突然の退陣表明をめぐる新聞各紙の報道姿勢   (その2) | 小田春人オフィシャルブログ「先人に学ぶ 産業と教育の復活」

安倍首相の突然の退陣表明をめぐる新聞各紙の報道姿勢   (その2)

 次に、朝日新聞。

 標題は、「『安倍政治』の弊害清算の時」

 安倍政権打倒を“社是”としてきたと言われる朝日新聞のこと、標題からして手厳しい。

 「政治の安定を回復したことが、世論に好意的に受けとめられたことは間違いあるまい。アベノミクスのもとで株高が進み、企業収益や雇用の改善につながったことも事実である」と評価とも言えない、客観的な記事風を装った書き方をしています。

 一方、批判(批難?)はこれでもかという位徹底しています。

 「長期政権のおごりや緩みから、政治的にも政策的にも行き詰まり、民心が離れつつあった。コロナ禍へ対応は、多くの国民の目に、後手後手、迷走と映った。野党やその支持者など、考え方の異なるものを攻撃し、自らに近いものは優遇する『敵』 『味方』の分断、政策決定においては、官僚の忖度(そんたく)がはびこり、民主主義の土台を崩す前代未聞の事態を招いた。安倍1強が長く続く中、自民党内で闊達な議論がすっかり失われた」。

 功績が何もなかったかの如くの書き振りです。

 

 次に、毎日新聞。

 標題は、「行き詰まった末の幕引き」

 標題の通り、朝日新聞に負けず劣らずで、社説の中に評価する言葉はありません。

 「政権の長期化に伴い、内政・外交とも停滞感が強まっている。国会を軽視する姿勢も目立った。野党を敵視し、反対意見には耳を傾けない。長期政権は維持したが、政策的な成果というより、『負の遺産』の方が残されているというのが実感だ」。

 

 次は、山陽新聞。

 標題は、「長期政権にも達成感なく」。

 案外だったのが、山陽新聞です。

 「円高是正や株価上昇に一定の成果は上げた」の文言はあるものの、総じて厳しい評価です。

 「旗印として掲げた経済再生は道半ばに終わり、憲法改正や拉致問題などは道筋はつけられなかった。景気回復の実感は乏しく、デフレ脱却も果たせていない。コロナ禍で深刻な状況に陥っている。看板政策のいずれも十分な実績を上げてきたとは言い難い。世論の強い反対を押し切って安全保障関連法を成立させた。政権は、その長さゆえのひずみやおごりも目についた。」

 

 最後に、中国新聞。

 標題は、「負の政治遺産はどうする」。

 朝日新聞、毎日新聞と同様とだけ書いておきます。

 

 自民党総裁・首相として6回の国政選挙に勝ち続けたのは、国民(有権者)の賛成、支援があればこそです。

 そして、7年8ヵ月政権を維持できたのは実績を評価されればこそでもあります。

 日本は民主主義国家ですから、いかなる批判も言論の自由が保障されているので自由です。

 それにしてもと思います。

 多くの新聞は、「不偏不党」(どちらの主義政党にも加わらないこと = 新明解国語辞典)を社是としています。

「不偏不党」から導き出されるのは「是々非々」です。

 首相は最高権力者ですから、批判もおおいに結構です。しかし嫌でも消極的でも認めるべきは認めないと、健全な言論空間は形成できないと私は考えています。

 読者諸賢はいかに思われるでしょうか。