「何事にも手を抜いてはならない。つねに全力で当たれ」
「46年前、大学を卒業し、社会人になるにあたって、母ヤエから三つのことをいわれました。
第一は、何事にも手を抜いてはならない。
つねに全力であたれ。
第二は、傲慢になってはいけない。
第三は、どんな人でも嫌いになることはない。
新聞記者の仕事をし、テレビにも出演しながら、いつも思うのは、これほど傲慢な仕事はないのではないかということです。というのも、人が何十年にもわたって努力してきたことを、さもわかったような顔をして、なんだかんだと批判するのですから、限りなく傲慢なことです。
私が心に決めていることがあります。それは、人を批判するときには、自分が批判される立場になっても、『なるほど、そのとおりだなあ』と思えるような批判でなければならないということです。誰よりも当の批判する相手の心に届くようでなければならないということです」
橋本五郎さんは、母の言葉を紹介しながら政治ジャーナリスト、政治ジャーナリズムの在り方を説かれています。
「範は歴史にあり」は、最も優れた政治評論集であり、人間的なぬくもりが伝わってくる橋本さんの著書です。折り折に読み返す、教示されるところ多い座右の書です。
安全地帯から、批判に終始するジャーナリストが横行する昨今、橋本五郎さんの評論は“一服の清涼剤”です。
いや、“一服の清涼剤”にとどまってはいけないのでしょうが‥‥。