「ローマ法皇に米を食べさせた男」(その2)
高野誠鮮さんの言葉から―。
舞台設定も異なり、あくまで原案ですが、ドラマに出てくる「役に立つから役人だ」というセリフは、僕が言ってきたことでしたから、こっぱずかしいですね(笑)。
2002年に農林水産課に異動した当初は、誰も相手にしてくれなかった。地元の農家の方々から「ダラ(バカ)」と呼ばれていました。
しかし、美味しい米もまずい米も同じ値段。
そんなの絶対におかしいじゃないですか。
農家は、役所の補助金とJA依存で、自立できない。なぜ過疎になったのか。後継者が育たないのか。
表面的な対策をしても、意味はない。誰も根本治療に手を突っ込んでいなかった。必要なことは、農家の自活自立。未来への可能性を見せることだったんです。
美味しい米をたくさんの人に知ってもらうため、影響力のある人に食べてもらうことを考えました。それで浮かんだのがローマ法皇。
手紙をバチカンに出してみることにしたんです。返事が来るはずないと誰もが思っていましたが、僕はバカですから、やらないと気が済まなくて(笑)。
(目立てば叩かれるのに、なぜ一生懸命になるのか)
楽しいからです。非難する人も反発する人もいる。理不尽さを感じることもあります。それも含めて、人生には意味があると思っています。
乗り越えられない試練は、やってこない。
日本人は身近なものを過小評価する悪い癖があるんです。大事なことは行動。少しでも可能性があるならやってみないと。
可能性の無視こそ、最大の悪策です。