「林原家 同族経営への警鐘」(その2) | 小田春人オフィシャルブログ「先人に学ぶ 産業と教育の復活」

「林原家 同族経営への警鐘」(その2)

 昨年8月1日のブログで、林原靖元専務が書かれた、「破綻 バイオ企業・林原の真実」に触れました。

 読後感を一言で表現すれば、「事実は小説よりも奇なり」と書きました。

今回も同じような読後感を持ちましたが、林原家の内幕については、より赤裸々に真相を語られています。

 2冊の本を読む限りにおいては、性格や考え方は兄弟でもこんなに違うのかという程異なります。

 「弟は私のことを異常なまでに恐れていたと思う。『林原は二人三脚経営ですね』と言ってくる人もいたが、2人は対等の関係になく、間違いなく上下の服従関係である。 

 私は利益や借入金はおろか、売上高すら性格には把握してなかった。すべては弟に任せ、弟が研究資金を出してくれるので資金繰りは問題ないと想像しているにすぎなかった。経費すべてが私達兄弟の没コミュニケーションで投入されていたことが破綻に至る道筋を作ったのだといえる。

 この根拠のない信頼感が、同族経営の暗部に他ならないと私は考える。

 身内としての信頼関係の上に、研究について私が全権を持ち、その他実務については弟が大きな権限を持つという完全なる役割分担が実現していた」

 

 会社には3時間しか出社せず、研究開発以外はすべて任せ、しかも没コミュニケーション。

 林原の極めて特異な経営形態が、破綻の引き金になったのは間違いないでしょう。

 それにしても、更正会社の弁済率が10%なのに93%というのは前例のない驚異的に数字です。

 両書を読んで、あの倒産劇は何だったのか、改めてその思いを禁じ得ません。お二人に共通する、その潔さが更にその思いを深くします。

 5万㎡の本社跡地には、秋のオープンを目指して、巨大な空母の如きイオンモールが建設中です。

 林原の破綻は、岡山県を代表するかつての超優良会社の倒産のみにはとどまりません。

 岡山市のみならず岡山県経済の行方にも十大な影響を及ぼすこと必定です。

 果たして吉とでるのか、歴史の証明を待たねばなりません‥‥。