「はなちゃんのみそ汁」
「はなちゃんのみそ汁」は、33歳の若さで乳がんのため亡くなられた母(安武千恵さん)と5歳の娘(安武はなちゃん)、そして父(安武信吾さん)の物語です。
友道健氏校長の講演でこの話を聞き、すぐ書店へ行きました。
一緒に、「娘、はなへーママが遺したいのちのレシピ」を見つけました。
これは、千恵さんが生前中、「早寝早起き玄米生活~がんとムスメと、時々、旦那~」というタイトルで書いていたブログを書籍化したものです。亡くなられたのは2008年ですが、どちらも2012年の出版です。
涙で霞む眼を何度も何度も拭いながら、一気に読みました。
「ママへ
はなはね、ママに伝えたいことがあるんだよ。それはね、おべんとうが全部作れるようになったこと。
びっくりしたでしょ。さいきんのとくい料理は、カレーと肉じゃが。
ママは、きびしかったけど、教え方がわかりやすかったよ。きびしいほうが、はなが上手になるからね。
人の悪口を言わない。笑顔を忘れない。全部、ママが教えてくれたこと。
むずかしいな、いやだな、こまったな、と思っても、なんとかなるもんね。『きりかえ、きりかえ』って、ママがよく言ってたもんね。
はな、もう泣かないよ。がんばるよ。
安武はな」
「私は、がんになった後に、ムスメを授かりました。だからこの子を残して、死ななければなりません。
がんになってもならなくても、死ぬ順番は、私が先に決まっています。
逆になったらいけない。だとすると、心残りがないように、死ななければなりません。
彼女は、私がいなくなった後、生きる上で必須科目となる、家事はできるだろうか。
今ムスメに手伝わせている家事は、洗濯干し、洗濯たたみ、風呂洗い、靴並べ、掃除、保育園の準備、タンスの整理、自分の服の管理等。
ついつい、わかっていても、危ないから、自分がした方が早いから‥‥云々と理由をつけて、一番大事な料理は最後になってしまいますね‥‥‥。
彼女の手伝いの中に、配膳と料理部門を増やすことが、今後の私の課題。
ムスメが一人でも強くたくましく生きていけるように。
今はママのこと厳しいと思っているかもしれないけれど、いつの日かムスメが独り立ちした時に、一人できちんと生きていけるように、その手助けだけはしてあげたい。 安武千恵」
人はその人の人生が長くても短くても、それぞれにかけがえのない“天命”を授かって生まれてきたという先人の言葉を思い出しました。
生きることの大切さ、家族の大切さ、ひたすらに懸命に生きた姿が、読む人の胸を打ちます。
そして、生きる勇気が湧いてきます。