元旦の社説を読む(その1) | 小田春人オフィシャルブログ「先人に学ぶ 産業と教育の復活」

元旦の社説を読む(その1)

 年頭に当たり、新聞7紙の社説は何を主張し、何を訴えたかを紹介します。各社の編集方針が凝縮して表れると考えるからです。


 〈読売新聞〉

 1千万部という日本最大の発行部数を誇る読売新聞は、通常の2倍位の字数で力が入っています。

 テーマは「日本浮上へ総力を結集せよ 『経済』と『中国』に万全の備えを」です。


 「アベノミクスは、3本の矢のうち、大胆な金融緩和と機動的な財政出動の2本の矢によって、日本の景気を持ち直し、株高、円安も実現するなど、一定の成果を上げている。日本の国際社会での存在感が増したことも確かだ」と評価した上で、「今年はアベノミクスの真価が問われる。アベノミクスが雇用や賃上げに波及して、民間主導の持続的な経済成長を実現するには、成長戦略という3本目の矢が的を射なければならない」としています。

 そのためには、「安全が確認できた原発を着実に再稼働させなければならない。原発のインフラ輸出を成長にも生かしたい」

 国際関係では、「日米同盟の深化によって、中国を牽制することも重要だ。集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更に踏み切ることも避けて通れない。米国と東南アジア諸国連合などと連携し、中国に対し、国際社会の一員としての責任を自覚して行動するよう説得し続けることが日本の責務である」と結んでいます。


 〈朝日新聞〉

 テーマは「政治と市民 にぎやかな民主主義に」


 「行政府は膨大な情報を独占し、統治の主導権を握ろうとする。その結果、多くの国民が『選挙でそんなことを頼んだ覚えはない』という政策が進む。もとより行政府を看視するのは立法府の仕事だが、ミイラ捕りはしばしばミイラになる。議会と選挙以外で市民が政治に働きかける手段は海外でも見直せつつあるようだ。場合によっては、これから2年半、国政選挙はない。それを『選挙での多数派』に黙ってついていく期間には出来ない。もっとにぎやかな民主主義で応える新年にしたい」と主張しています。

 市民の看視活動の強化が「にぎやかな民主主義」につながるということでしょうか。

「国民」と言わずに「市民」と言っているところが、いかにも朝日新聞らしい。


 〈毎日新聞〉

テーマは「民主主義という木 枝葉を豊かに茂らそう」


 「今の社会はどうか。あらゆる政策を、賛成する側と反対する側に分け、多様な世論を『味方か』『敵か』に二分する政治。対話はより対決、説得より論破が、はびこってはいないだろうか。そんな象徴が靖国だ。首相の参拝は、激しい愛国心、ナショナリズムを喚起する。参拝支持者が愛国者で、反対者は愛国心のない人間であるかのような不寛容さを生み出す」ときめつけるような言い方をしています。

 「民主主義を、1本の木になぞらえてみよう、その幹にあたるのが、選挙と議会での多数決だ。豊かな枝葉が幹を支え、大地に根を張って初めて、その木は、すっくと立つことができる。その枝葉のひとつひとつに、私たちもなりたい、と思う。『排除と狭量』ではなく、『自由と寛容』が、この国の民主主義をぶあつく、強くすると信じているからだ」


 いみじくも、朝日新聞と毎日新聞も同じような主張をしています。

 民主主義の根幹をなす、代表民主主義や間接民主主義は不十分で、「にぎやかな民主主義」や「枝葉を豊かにする民主主義」が大切だと強調しています。