「政治的良心に従う」
石橋湛山は、昭和31年12月、鳩山一郎首相
退陣を受けて首相に就任しました。
急性肺炎で倒れ、折から始まっていた国会の
予算審議に出席できなくなりました。
就任わずか65日で、「政治的良心に従う」の言葉を
残して、即座に退陣しました。
国会に出席し、審議を通じて自らの政治姿勢、
政策方針を述べられないことは、首相としての
責任を果たせないと決断したのです。
歴代の首相の中で、石橋首相ほどその辞任が
惜しまれた人物はいないといわれます。
理由は、経済を中心としたその見識、当時の
絶対的権力であるGHQに対しても堂々とものを
言う胆力などが高く評価されていたからですが、
さらにいえば、その引き際があまりにも爽やかだった
ことが大きいのではないでしょうか。
「政治家に道徳や正直や清潔を求めるのは、
八百屋に魚をくれというに等しい」と言った人も
います。
それでも、「政治的良心」は政治家にとって
最後の砦でなくてはなりません。
時の首相に、「政治的良心」がなくなったら、
もはや世も末です。