社是・社訓 | 小田春人オフィシャルブログ「先人に学ぶ 産業と教育の復活」

社是・社訓

 大企業、中小企業を問わずほとんどの企業は、企業理念、経営指針、企業の精神という企業の憲法を、社是・社訓などの形で経営訓として制定しています。
 永続する企業の社是・社訓には汲めども尽きぬ教訓が含まれています。
 ここでは、「本を読む時間を持て」と定め、それを講じて日本一の大書店を開いた鹿島建設の例を紹介します。
 外交官から、鹿島建設を経営する鹿島家の養子となった鹿島守之助は、日本を代表する建設会社鹿島建設の中興の祖と呼ばれています。
 経営者、学者、政治家の三つの顔を持つ鹿島守之助は、それだけに当時(1936年)としては極めて革新的な「事業成功の秘訣二十ヵ条」を発表しています。
  第1条   「旧来の方法が一番いい」という考え方を捨てよ
  第2条   絶えず改良を試みよ。「できない」と言わずやってみよ
  第3条   有能な指導者をつくれ
  第4条   人をつくらぬ事業は亡ぶ
  第5条   「どうなるか」を研究せよ
  第6条   本を読む時間を持て
  第7条   給料を高くせよ
  第8条   よく働かせる人たれ
  第9条   賞罰を明らかにせよ
  第10条  なるべく機械を使うこと
  第11条  部下の協力一致を計れ
  第12条  事業は大きさよりも釣り合いが肝心
  第13条  なによりもまず計画
  第14条  新しい考え、新しい方法の採用を怠るな
  第15条  独りよがりは事を損ず
  第16条  イエスマンに取り巻かるるなかれ
  第17条  欠陥は改良せよ
  第18条  人をうらまず突進せよ
  第19条  ムダを見つける目を開け
  第20条  仕事を道楽とせよ
 
 具体的で分かり易く、70年以上も経過した現在でも立派に通用する、事業成功の秘訣です。
 鹿島守之助は、「どんな本でもすぐ手に入る書店が欲しい」が口癖でした。その思いは、1978年、東京駅八重洲口の鹿島建設旧本社ビル跡地に、日本一の大書店「八重洲ブックセンター」のオープンに結実しました。ご本人は、心筋梗塞のため急逝し、完成を見ることはなかったといいます。
 入り口には、“読書家のシンボル”薪を背負って読書する二宮尊徳の銅像が立っています。私にとっても、東京出張のたびに必ず立ち寄る“オアシス”です。