輿論(よろん)と世論(せろん) | 小田春人オフィシャルブログ「先人に学ぶ 産業と教育の復活」

輿論(よろん)と世論(せろん)

 笹川陽平日本財団会長が、「マスコミは警世の木鐸たれ」と題して、産経新聞「世論」欄に書かれていました。
 「最近、興味深く読んだ京都大学・佐藤卓己准教授の『輿論と世論―日本的民意の系譜学』によると、戦後、当用漢字表から『輿』の字が外れたため現在は『世論』に一本化されているが、戦前までは世論をリードするような言論を『輿論』、個々人の気分や世間の雰囲気を『世論』と使い分けていたという。読者が求めているのは、ここでいう輿論であろう。
 輿論の盛り上がりこそ政治に活気を与えることになる。」
 英語でいうと、理性・倫理に基づく公的意見たる「輿論」は、public opinionであり、大衆的な感情・感性を表す「世論」は、public sentimentsとなります。
 文芸評論家の富岡幸一郎さんは、次のように評論されています。
 「世論とは本来は、パブリック・オピニオンのはずだが、平成日本では私語の堆積の様相を呈してはいまいか。
 各新聞の世論調査が政治を動かし、政治家はその数字を見ながら動く。
 世論に憂慮する政治家ではなく、憂国の政治家の出現をこそ期待したい。」
 “私語の堆積”とはきつい言葉ですが、“臓腑にストンと落ちる”お二人の意見です。
 私達は物を考える場合に、言葉で考えます。
 このように、「輿論」はよろんと読み、「世論」はせろんと読み、書き方も読み方も分けると意味まで含めてスッキリとします。

 木鐸(ぼくたく)=昔、中国で、法令などを人民に触れて歩く時に鳴らした、舌が木製の大きな鈴のことで、社会の指導者の意の古語的表現(新明解国語辞典)