一味違う退職挨拶 | 小田春人オフィシャルブログ「先人に学ぶ 産業と教育の復活」

一味違う退職挨拶

 野瀬勝三前井原鉄道(株)代表取締役専務から“一味違う退職挨拶”をいただきました。
 ご本人の了解は取っていませんが、私の独断で全文を紹介します。

 春すぎて 夏来にけらし 白妙の
   衣ほすてふ 天の香具山       持統天皇


 暑さもいよいよ厳しくなり朝顔、ほおずきのシーズンとなりました。
                                              さて、私こと
 平成20年6月23日をもって井原鉄道株式会社を退任いたしました。
 平成14年4月1日にお世話になって以来、「改革」を持論とし、生来の反骨精神も加味され、信ずる道を駆け抜けた6年3ヶ月でありました。
 この疑問符の塊のような私と遭遇した多くの方々にご心配とご苦労をお掛けいたしましたことをここに深くお詫び申し上げます。
 多くの方々から頂戴した多くの言の葉により私の心のステージを高めることができましたし、ひとつひとつが素晴らしい年輪となって刻み込まれております。
 私の人生を東海道五十三次に例えるならば、江戸日本橋から三重県亀山の宿までの四十五次が県職員と前任の健康づくり財団とすれば、その宿から滋賀県大津の宿までの七つの宿が「井原鉄道」にお世話になった時と思っております。そして、最後の一つ 大津から京都三条大橋の間は私にとりまして、これまでの反省と自戒の旅にしたいと考えております。
 井原鉄道では、四季折々の草花を愛でながら歩む平坦な道もありましたが、急峻な山道を越える日もあり、また、小田川や高越城址から吹きつける強風もありました。
 しかし、どのような時でも、往きかう人、歩みを同じくする人、宿場で出迎えてくれる人、それぞれが真心をもって善意の手をさしのべて下さいました。
 この道中での様々な出来事があたかも走馬灯のように私の脳裡を一つ一つ駆け巡ってまいります。
 人生とは旅であると若山牧水が言っておりますが、それは人と人との出会いと言えるのではないでしょうか。
 よき出会いにはそれを喜びとし、また、そうでない時は自己修養の契機と捉えればと考えます。
 どんな出会いも私にとりましては意義のある必要な出会いであったと確信しております。そして、この旅をつつがなく終えることが出来ましたのも、ひとえに皆様方のお陰と感謝いたしております。
 これからは、急激に変化する時代にあって、その変化を楽しみながら、日々、感動に向って走ってゆきたいと思っています。
 この先、一体どのような感動が待っているでありましょうか。その期待感があらゆる原動力になるでありましょう。
 わがままな私の来し方を温かく見守って下さった皆様方に沢山の「ありがとうございました」を申し上げ、ここに退職のご挨拶といたします。

 現役を引退する時、こんな文章が書けたらすばらしいなと思えるような味のある挨拶です。
 “井原線の再建に第二の人生を賭けた男”野瀬さんには、私自身「是が非でももう1年」とお願いした経緯もあり、感謝の気持ちで一杯です。
 後任には、岡山県立大学事務局長を最後に県を勇退された三浦一男(くにお)さんが就任されます。
 三浦さんも最適任です。
 来週は、新旧代表取締役専務の“激励会”を計画しています。
 お二人を囲み、瀧本市長や古宮副市長など関係者とともに井原鉄道の“来し方行く末”を語り合いたいと考えています。