「ご苦労さま」の使い方(その3) | 小田春人オフィシャルブログ「先人に学ぶ 産業と教育の復活」

「ご苦労さま」の使い方(その3)

 少々長い引用になりますが、次に「日本語〇X辞典」
の解説を紹介します。
 
 昭和62年のNHKの調査では、「ご苦労さま」は
目上に失礼と考えるかどうかの問いに対して
 失礼だと思う   東京27.8% 大阪25.8%
 失礼だと思わない 東京63.2% 大阪63.5%
 どちらとも言えない東京 7.3% 大阪 8.0%
というような結果が出ています。
 「失礼と思わない」と答えた人が多いにもかかわらず、
今現在も「ご苦労」「お疲れ」という言葉がたびたび問題
になるのはなぜでしょうか。
 ここでは「ご苦労さま」という言い方について改めて
考えてみたいと思います。
 まず、「ご苦労さま」は本来は目上が目下をねぎらう
言葉であるから、目上の人に対して使うべきではない
とされていました。
 しかし最近は、相手との関係や勤務する会社の
雰囲気などによって、こうしたあいさつ言葉の
とらえ方が違ってきたという、状況の大きな変化が
見られます。
 たとえば社長と社員であっても、少人数で普段から
和気あいあいといった雰囲気であるとか、社内だけで
なく公私にわたりつき合いがある、またより親しみを
持つべくあえてそうしている。
「ご苦労さま」「お疲れさま」と皆で同じ言葉を使うこと
によって、コミュニケーションをより図ることができる、
などの理由も考えられます。
 これは何も大人数の会社は和やかでないといって
いるのではなく、相手との関係によって、厳しく
一つの枠内に収めて、正しいとか誤りだ、また失礼、
失礼でない、と決めつけるのは難しいということです。
 さらにもう一つ考えられることは、いくら会社の
上司や目上の人が相手であっても、相手の苦労に
対して何か言葉を掛けたいという気持ちによるものと
思います。
 それではどのようにしたらいいのでしょう。
 「ねぎらう」という意味だけを取り上げますと、
どのような言い方をしても、「ご苦労さま」は適切では
ない言い方になってしまいますが、相手が自分に
してくれたことに対してのお礼、おわびの言葉、
大変な思いをなさったことへの言葉というような
気持ちで、言い換えることはできるのではないかと
思います。
 「ご苦労さま」を言い換えるとすれば、
  次のようになります。
 「すっかりご苦労をお掛けしましたようで、
  大変申し訳ないことと思っております」
 「ご苦労をお掛けしまして、娘も大変感謝して
おりました。有難うございます」
 「ご苦労をお掛けしまして申し訳ございません。
おかげさまで大変助かりました」
 「そんなご苦労がおありになったとは、全く存じ
上げませんでした。失礼をどうかお許し下さい」
 懇切丁寧な分かりやすい解説です。
 唯、和気あいあいとか親しみのコミュニケーションと
して「ご苦労さま」を使うには、その組織に共通の
認識が必要だとは思います。