六本木交差点において

土曜日の朝7時半など

朝というよりも深夜と言う方が

しっくり来るかも知れない。


朝まで飲んだ仲間を

タクシーで見届ける男性


5次会の店を

探しているような

男女の集団


アタッシュケースを持ち

スーツを着てはいるものの

Yシャツの裾が出ている

ビジネスマン


完全にメイクが

全てにおいて

1センチずれている女性・・・


そんな人達を掻き分け

僕は流れとは逆走する。


その足許には

時折つい数分前に

人間の口からリバースされた

液体・物体が

アスファルトに何ケ所も

垂れ流されているので

まるで地雷原を駆け抜けるように

走らなくてはならない。


そんなことを

考えながら走り抜けると

まるで歌番組のセットの

ドライアイスのような

喫煙所の煙の中に突入する。


土曜日早朝の

六本木交差点を

駆け抜ける場合

いくらでも地雷はある。


しかし

すれ違う

朝まで飲んだ人達は長時間掛け

ストレスを解放したはずにも拘らず

その表情や顔色は皮肉にも

逆にストレスを溜め込んだ

ようにも見える。


そんな事に気づくのも

流れとは逆に走っているから

なのだろうか。


つい数年前まで

僕もあの中にいた。


そして

自らも正確な時計のように

タバコとライターのガスを消費し

煙の中にいた。


僕の人生は

こうして走ることも含め

妻と出会ってから

完全なる第二章に

突入している。


そんなことを考える一方で

土曜日の六本木交差点は

文学の才がある人ならば

5分いるだけで

何本も小説を書けてしまうのでは

ないだろうかと思ってしまうほどの

まさに人間交差点である。


その中にいたら

気づかないことも


逆方向に走ることで

気づくこともある。


『あしたのジョー』の

矢吹丈がドヤ街から

泪橋を逆に渡る時

一体どれだけのことに

気づいたのだろうか


などと考えながら

そんな土曜日早朝の

六本木交差点を駆け抜け

皇居へ向かい疾走する。


走る僕の体を包んでいるのは

アディダスのランニングウェア。


上下とも体にフィットする

アディダスのタイトなインナーの上に

さらにTシャツとパンツを重ね

両腕にもアディダスの

リストバンドが装着されている。


リストバンドは

汗を拭くタオル替わりのものだ

とつい最近気づいた。


人間やってみなければ

わからないことだらけである。


シューズはニュートンの

ランニングシューズ。


腕時計はガーミンのGPS。

これがあることで

長距離を走れる。


しかし一方で

常に誰かに見られている

常に誰かに追われている感覚もあり

その強迫観念も僕は嫌いではない。


六本木交差点を越え

そこからは意外と広い歩道を走ると

目に入ってくるビルは

それぞれいつもは

車で来る場所

という意識があるので

自分の足で走って通過すると

とても不思議な感覚になる。


そして

過去に何度も行ってる場所でさえ

何だか違う建物に見えてくる。


まずは

全日空ホテルと

アークヒルズを通過。


そして

内閣府の信号を越え

国会議事堂を左に見ながら

皇居の歩道へと

右回りで入っていく。


今日はLAのような

まさに抜けるような青空で

緑も眩しい。


早朝にも拘らず

ランナーは多い。

しかもみんな早い。


暫く走ると

右手にニッポン放送が

見えてくる。

さらに走れば

毎日放送

そして

TOKYO FMと

こう考えると

皇居の周りには

放送局が多い。


朝まで続いた編集か

今からの編集か

大量の素材を紙袋に入れ

顔色悪く運ぶ業界関係者であろう

人達と一瞬通りすがり

気づけば遠く後方に消えて行く。


いつも普通に見ている

その場所と

自分の足で走って通過する

その場所は

違うものに見えて来る。


皇居の歩道のコースには

全都道府県と

その都道府県の花の絵が

等間隔に埋め込まれている。


多分

東京都の管轄になるのだろう。


宮内庁管轄とも

国交省管轄とも思えない。


もしも東京都管轄だとして

東京都にこの花の絵のことで

一つリクエストが言えるのであれば


“あそこに書いてある

都道府県名と花の名前の文字を

もっとわかりやすい色にして欲しい。”


なぜなら

ランナーにとっては

一瞬で通過してしまい

しかし

その都道府県名と花の名前を

見たいのだが

字が薄く一瞬では全く見えない。


だけどランナーは

足を止めるのがいやなので

止まって見るわけにもいかず

そうは言っても気になって

確認したいというのが性。


だから

あの文字にわかりやすい色を

入れてもらえないものだろうか。


例えば

その花の色で

入れたらどうだろう。


そんなことを考えながら

走っていると

あっという間に一周してしまう。


その皇居一周の中でも

最も好きな絵は

TFMから三宅坂の交差点

右手に社民党本部方向へと

向かうカーブのアプローチ。


あのカーブから見える

お堀は特に美しい。


あの景色が

1kmは簡単に走らせてしまう。


そこから

再び皇居を離れ

国会議事堂へと向かう。


眩しい青空の中に

そびえ立つこの建築物は

いつからこんなにも

爽やかな早朝が似合わなく

なってしまったのだろう。


確か国会議事堂は

釘一本使用していない建築法

だったはずだ。


しかし


「渡る世間は釘だらけ。」


それこそ

国民は

年金・国債・借金・セシウムと

あらゆる釘の地雷原を

駆け抜けている。


ここは何をする場所か。


国民に選ばれた国会議員が

国民が幸せになる為の


「法律を作る場所」


である。


責務を全うして欲しい。


そんな国会議事堂の前で

写真を撮ろうと走りながら

ランニング用のリュックから

ごそごそと携帯を出そうとしていると

警備のおまわりさんに

かなり睨まれる。


しかし

今日は写真に撮っても

本当に美しい青空だった。


さらに走り

たくさんの政治家の方と

対談させていただいている

新しい参議院会館・衆議院会館を

左に通過し


そこからあえて

少し遠回りだが

民主党本部を通過。


かつて書籍で

代表室で

小沢さんと対談したことを

思い出す。


さらに

あえて自民党本部を通過。


自民党を飛び出たばかりの

舛添さんと

こちらも書籍で対談したことも

思い出す。


毎日のように

車で通過している場所も

こうして自分の足で走ってみると

日常気づかなかったことに気づく。


『「気づく」技術』(ダイアモンド社)

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そして気づけば

腕のガーミンは

15km走ったことを告げており

1時間半後の六本木交差点へ

再び戻る。


午前9時になった

六本木交差点には

まさに朝帰りと土曜出勤の

ビジネスマンが交差している。


六本木は

朝9時でもまだやっている

お店も多いが

ちょうど夜のお店が

殆ど終わり

一般のお店も始まる前で

たった1時間半で

爽やかな空気が

流れ始めている。


一体誰が片付けたのか

あの人間からリバースされた

物体もたくさんの吸い殻も

なくなっている。


100年後

今ある建物も人間も

殆どがない。


まるで

その時代を生きた

人間の存在は

ある日なかったかのように

掻き消されていくということを

象徴するかの如く

全ては入れ替わっている。


数時間前に

ここを通過して

どこかに消えて行った人々にも

それぞれ人生があり

そこには複雑なストーリーがある。


しかし

それさえも


「祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず
ただ春の夜の夢のごとし
たけき者もついには滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ 」


走ることは

爽やかなことだけを

気づかせるのではない。


心をフラットにさせ

見えないものを

見えるような気がする

効果があるかも知れない。


気づけば太陽は昇り

熱を持ち始めていた。


おちまさと


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