新嘗祭 | お茶の水女子大学日本語・日本文学コース  アシスタントblog

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今日は新嘗祭の日ですね。

(一般的には勤労感謝の日ですが、日文生感を出してみました)

 

この新嘗祭は明治時代に11月23日に行うと決められ、その後昭和に「勤労感謝の日」という名称に改められたということです。

「勤労感謝の日」だとイメージしにくいですが、新嘗祭は稲の収穫祭として古くから民間儀礼としても宮廷祭祀としても行われていたそうです。

今でも新嘗祭は各地で行われていますし、宮中祭祀としても最も重要なものであると宮内庁のホームページの「主要祭儀一覧」に記載されていました。

 

ということで古来よりとても重要な祭祀だった「新嘗祭」は、万葉集や古事記、日本書紀にも記述があります。

今回は日本書紀のアマテラスとスサノオの話から新嘗の記述があるところを抜き出してみましょう。

(書き下しと訳は新編日本古典文学全集によります)

 

復天照大神の新嘗きこしめさむとする時を見て、則ち陰に新宮に放くそ(注:漢字は「かばねに矢」)る。

(また天照大神が新穀を召される新嘗のちょうどその時をうかがい、ひそかにその新嘗の御殿に大便をして神聖さを汚した)

 

……大変尾籠な話で失礼いたしました。

スサノオ、とても激しいですね。祭祀を行う神聖な御殿を汚すとは……。

ただ、アマテラスはこれくらいではスサノオをとがめることはなかったと古事記の同様の場面に書いてあります。

そして、このあとスサノオが馬の皮を逆剥ぎにして(むごい……)アマテラスのいる御殿の屋根に穴をあけて放り込み、それに驚いたアマテラスはうっかり自分の体を傷つけてしまいます。

これにはさすがのアマテラスも怒って、かの有名な天石窟籠りにつながっていくのでした。

 

この場面でアマテラスが行っているのが新嘗の儀式で、新編日本古典文学全集の注によると、「新しくとれたニヘ(神にささげる御饌)の代表としての稲を天照大神が食べるので、いわゆる「神嘗の祭り」に相当する」ということです。

このように日本書紀や古事記を参照してみると、ずいぶんと昔から日本人にとってとても重要な儀式だったんだなあと実感できますね。

勤労感謝の日ですが、もともとの意味をふまえて特に農家の方に感謝をするのもよいかもしれません。