これまで、いろいろな生物学的製剤がEGPAに及ぼす効果を論文を通じて見てきたのだが、なかなかストンと腑に落ちないのはなぜかと思うに、やはりメカニズムの青写真がイメージできていないからである。免疫システムは誠に不可解であって、我々の理解を阻む。とにかく、登場するプレーヤーが多いし、その役まわりも複雑である。無駄も実に多い。
なぜ、無駄が多いかというと、おそらく進化の本質が「行き当たりばったりの偶然性」にあるからだと想像される。我々は自然の中に秩序なるものを見ようとするが、自然からすれば、そんなことは知ったことではない。たまたまが途方もない時間をかけて積み重なった結果が現在の自然界なのであって、そんなものに秩序もへったくれもないのである。
というわけで、複雑怪奇な免疫システムだが、こと喘息の発症という部分だけ切り取ってみると、どうやら図のようになっているらしい(出典はここ)。
喘息は、気道上皮細胞が刺激され、痰を分泌したり、炎症を起こしたり、気道が狭くなったりして発生する。咳が止まらなくなり、ゼーゼーと息をするのは、要するにこういうことである。が、なかなか面倒なのは、そこに至るpathが複数あるという点にある。
Path1
①気道上皮細胞がウイルスなどをキャッチして、TSLP(アラート)を発信
②自然リンパ球がTSLPをキャッチして、IL-5(アラート)を発信
③好酸球がIL-5をキャッチして、増殖&活性化
④好酸球が気道上皮細胞に働きかけ、喘息を発症
Path2
①気道上皮細胞がウイルスなどをキャッチして、TSLP(アラート)を発信
②自然リンパ球がTSLPをキャッチして、IL-13(攻撃ミサイル)を発射
③IL-13が気道上皮細胞に着弾し、喘息を発症
Path3
①気道上皮細胞がアレルゲンをキャッチして、TSLP(アラート)を発信
②樹状細胞がTSLPをキャッチして、ヘルパーT細胞に発動指示
③発動指示を受けたヘルパーT細胞がIL-13(攻撃ミサイル)を発射
④IL-13が気道上皮細胞に着弾し、喘息を発症
Path4
①気道上皮細胞がアレルゲンをキャッチして、TSLP(アラート)を発信
②樹状細胞がTSLPをキャッチして、ヘルパーT細胞に発動指示
③発動指示を受けたヘルパーT細胞がIL-4やIL-13(アラート)を発信
④B細胞がIL-4やIL-13をキャッチして、特異的IgE(アレルゲンセンサ)を増産
⑤マスト細胞が特異的IgEを装着して、待機状態
⑥特異的IgEがアレルゲンを感知して、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエン(攻撃ミサイル)を発射
⑦ヒスタミンやロイコトリエンが気道上皮細胞に着弾し、喘息を発症
Path5
①気道上皮細胞がアレルゲンをキャッチして、TSLP(アラート)を発信
②樹状細胞がTSLPをキャッチして、ヘルパーT細胞に発動指示
③発動指示を受けたヘルパーT細胞がIL-5(アラート)を発信
④好酸球がIL-5をキャッチして、増殖&活性化
⑤好酸球が気道上皮細胞に働きかけ、喘息を発症
身体の中は、とかくに忙しい。こうしてみると、Path4がやたらと冗長である。そして、哀しいかな、たいていの場合、冗長なプログラムはバグを発生する。そもそもヘルパーT細胞が四方八方にサイトカインをばら撒きすぎである。行き過ぎたバラマキは、国家財政も免疫システムもよい結果を生まない。しかも、B細胞が特異的IgEをせっせと作って、マスト細胞がそれを装着して待機しているのが頂けない。こんな迂遠なことをやるから、どうでもよいsituationでヒスタミンをボロボロと振りまいて、花粉症のようなアレルギーを発症する。ポンコツぶりが極まっている。とまぁ、突っ込みどころはいろいろある免疫システムだが、ここでひとまず文句は飲み込んでおく。
さて、私はEGPAに罹患しているのだから、好酸球が関与するPathを遮断すれば、病気の再燃を抑え込むことができる。つまり、Path1とPath5の遮断である。よって、TSLPとIL-5のやり取りを遮断すればよい。これらに対応する生物学的製剤が、ファセンラ(ベンラリズマブ)であり、ヌーカラ(メポリズマブ)であり、シンクェア(レスリズマブ)であり、テゼスパイア(テゼペルマブ)である。
この中でテゼスパイアだけがTSLPを遮断する生物学的製剤だが、こんな上流でPathをぶった切るのがいいことなのかどうか??イメージ的には、トイレの水が流れっ放しで止まらないので、八ッ場ダムを壊しました、というふうにも捉えられるし、冷静に考えて、これが筋のいい方法なのかは疑問である。
一方、ゾレア(オマリズマブ)、デュピクセント(デュピルマブ)、リツキサン(リツキシマブ)は、いずれもB細胞に関連した生物学的製剤である。だから、喘息を抑える効果は期待できても、機序を考慮するとEGPAの抜本的な治療法にはなり得ない。それどころか、かえってEGPAの再燃率をアップさせるとあっては、おいそれと使うわけにもいかないのである。
なぜ、機序からはシンクェアもテゼスパイアもEGPA治療に有効だと思えるのに、実際に使ってみたところ、思ったほどの成果を上げていないのか??なぜ、ゾレア、デュピクセント、リツキサンを使うとEGPAの再燃を促してしまうのか??正直、さっぱり分からない。
分からないと言えば、そもそも上記の免疫システムも個人的にちゃんと理解しているわけではない。単なる受け売りを書いただけである。早い話、知ったかぶりである。しかし、そんな厚顔の極みとも言える所業を尽くしでもしないと、論文すら頭に入ってこないので、恥を忍んでそれなりにまとめてみた。改めて、免疫システムの近寄りがたさを感じた次第である…。
