師匠って実は。
超最先端ハイテクノロジーの専門家で、といってもエンジニアっていうわけではなく、その知識や理論を売ったり、教えたりしている。らしい。こう、パソコンを打ちながら、なんて遠い世界・・・と実感。
週末、ベランダでブランチしていたときのこと。
師匠がおもむろに打ち明けてきた。
実はさ、先日、1本の電話がかかってきたんだ。
業界のネットに公開しているプロフィールを見た人からだった。
専門分野においていまだかつてない新しいプロジェクトが始まるという。
もし、興味があったら、ぜひ話す機会を設けられないか。
正にこれはスカウト。最先端のそしてまだ誰も行っていない新しい極秘プロジェクトへの引き抜き。
目がベルサイユの薔薇風にキラキラしてしまう。
広がる青空に昇る太陽が、私たちに希望の光を降り注いでいる。
もちろん今の仕事もあるから、辞めてすぐ移る、なんてことはできないけど、だけど、少なくともその専門分野でのパイオニアの一部であることが、自信をくれる。
話を聞いてみて、また考えればいいんじゃない?
別に今の会社辞めたっていいよ。
そう言った。
数日後。スカウトの君から再び連絡がきた。もし興味があるようなら、簡単な詳細をお伝えしますと、彼は続ける。
プロジェクトは来月からスタートする、未着手のものであること。
依頼は、世界に名の知れた超大手企業から。
しかし、師匠はその企業名を聞いて、引いてしまった。
実は、師匠はその会社と今の仕事で非常に深く取引をしているから。
ここでそっちに引き抜かれるわけにはいかない・・・・。
それでも詳細を掘り下げて話を続けていく。
ん・・・・。
んんん・・・・・。
戸惑いが、疑惑へ変わっていく。
あれ・・・・?
なにかおかしい・・・。
疑惑が、不確かな予感へ変わっていく。
もしかして・・・・。
ひょっとして?
予感が確信に変わった。
すいません、そのプロジェクト、僕が取り仕切って、企業に売ってるんです。
なんとそのプロジェクト、師匠が日々企画し、企業に掛け合い、コンサルタントしている、自分のプロジェクトだったの。そのプロジェクトを買い取った企業が、立ち上げるにあたって、その手の専門家を探し、師匠のプロフィールにたどり着いちゃったって、ギャグみたいな話で。
あんなにベルサイユの薔薇みたいに目を輝かせたのに、自分の作ったパンを自分で買うようなこの話。ほんとに二人で大笑い。
だけど、そんな仕事ができてうらやましいなと思った。そして、オーストラリアという外国において、その専門分野で必要とされる人材であるフランス人・師匠を誇りに思った。
私もNo1じゃなくてもいいけど、師匠みたいにOnly1な人になりたい。
って、SMAP?