行動を減らすということ その4 レスポンデント消去 | わんこも、そして飼い主さんも

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「行動を減らす」をテーマにした記事、4回目です。
とかく「叱ってやめさせる」ということが言われがちな、「行動を減らす」というミッションに対して、「叱る以外にもいくつも方法があるんですよ」ということを、お伝えしていくシリーズ記事です。

今日ご紹介するのは「レスポンデント消去」です。
これは、なかなか耳慣れない言葉だと思います。
そして、2回目のときの「消去」 とは、違う「消去」になります。※1

レスポンデント消去を理解するには、まず「レスポンデント条件づけ(別名:古典的条件づけ)」を知っておく必要があります。

パブロフの犬実験」が、有名ですね。

 1 エサを見せる → 唾液が増える
 2 メトロノームの音→エサを見せる→唾液が増える
 3 メトロノームの音→唾液が増える

これが、パブロフの行った「レスポンデント条件づけ」の実験です。
ここで示されたのは、「まったく意味のない刺激(中性刺激)」である、「メトロノームの音」が、「エサ」という「唾液の分泌を促す刺激」と一緒に呈示されることで、エサと同様「唾液の分泌を促す刺激」と同じ機能を獲得する(条件づけられる)ということでした。
そして、この「レスポンデント条件づけ」で、条件づけられた反応(メトロノームの音だけで、唾液が増えるという反応)を、「レスポンデント反応」と呼びます。

さて、この「メトロノームの音→唾液が増える」という条件づけが完了した後に、エサをまったく見せずに「メトロノームの音だけを聞かせる」ということを続けたら、どうなるでしょうか?
最初のうちは唾液は増えるのですけれど、そのうち全然反応が出なくなります。
これが、「レスポンデント消去」です。

このように、「何らかの刺激と条件づけられたレスポンデント反応は、その刺激だけを与えられ続けると、生起しなくなる」ことがわかっています。
ものすごく乱暴な言い方をすれば、「馴れる」ということになるでしょうか。

これを応用して、「行動を減らす」ことも可能なんですね。

たとえば「他の犬に追いかけられてから、他の犬を見ると吠えるようになった」という場合、有効です。

 他の犬→追いかけられる→恐怖を感じる

このような経験をしたことで、「他の犬→恐怖」という条件づけが成立したと考えられます。
その場合、「何度も他の犬に出会わせるということで、 他の犬→恐怖 という条件づけを消去する」わけです。

まあ、これだけで対応できる場合と、対応できない場合とがあるので、その辺はきちんと確認しながらやっていかなくてはいけません。
しかし、「他の犬に会ったら吠える」というわんこが、単に「山ほど犬と会わせるようにしただけ」で、その問題行動が出なくなったという例は確かにあります
これは、この「レスポンデント消去」が起こったと考えられます。※2 ※3
これも、「叱らなくても、行動が減る」ということの一例です。



※1
2回目の記事の「消去」は、正しくいえば「オペラント消去」と呼ばれるもので、今回の「レスポンデント消去」とは違うものです。


※2
レスポンデント消去の概念を応用した技法には、「脱感作」や「フラッディング」など、様々なものがあります。
しかし、下手をすると余計に反応を増大させてしまう(簡単に言うとひどくなる)可能性がありますので、行動的アプローチがわかっているトレーナーの指示の元で行ってください。
飼い主さんだけでやっても、うまくいかない可能性は高いです。


※3
「飼い主に触られると唸る、怒る」という犬に対して、「何時間も撫で続ければなおります」というアドバイスをするトレーナがいますが、やめておいた方が良いです。
これは、↑の「フラッディング」になると思いますが、単純に危険です。
フラッディングは、うまくいけば短時間で効果を上げることができる方法ですが、失敗するとちょっと大変。
また、反応が消去されても、その後復活することもありますので(反応の自発的回復)、注意が必要です。