行動を減らすということ その3 負の罰(弱化) | わんこも、そして飼い主さんも

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「行動を減らす」これをテーマにしたシリーズ記事、3回目です。

前回は「消去」というものについて、説明しました
今回は、タイトルにもあるように「負の罰(弱化)」です。

この「負の罰(弱化)」を理解してもらうために、まずは「正の罰(弱化)」について、知ってもらおうと思います。
「正の罰(弱化)」は、実に簡単です。
たとえば、以下のような流れを「正の罰(弱化)」と呼びます。

 叱られていない→行動→叱られる

上の流れで注目すべき点は、「行動の前と、後」です。
「行動の前」を見ると、「叱られていない」とあります。
そして、「行動の後」を見ると、「叱られている」となっています。
このように、「行動の前にはなかったものが、行動の後に出現する流れ」を、「と呼びます。
ゼロ(なかった)から、プラス(出現)なので、正」と覚えます。
そして、次の機会でその行動をしない、あるいは行動の強度や頻度が減ったら、それを「罰(弱化)と呼びます。
これが、「正の罰(弱化)」です。

一般的な言葉で言えば、「叱る」「怒る」「叩く」など、「行動の後で何らかの罰を与えて、行動をやめさせようとする」ことを指す感じです。

では、今日のテーマの「負の罰(弱化)」です。

「正の~」は、「行動の前になかったものが、行動の後に出現」ですから、「負の~」はそれの反対です。
つまり、「行動の前にあったものが、行動の後に消失」という流れになります。
そして、次の機会でその行動が減ったら「罰(弱化)」ですので、↓のような流れになります。

 構ってもらっている→甘噛みする→構ってもらっていない

行動の前にあった「構ってもらっている」という出来事が、「甘噛みする」という行動の後に消失しています。
そして、今後「甘噛みする」という行動が減ったら、これは「罰(弱化)」ということになりますので、これは「負の罰(弱化)」ということになります。※1 ※2

単純に「行動を減らす」という対応を考えた場合、これら2種類の罰(正の罰と、負の罰)が考えられます。
「正の罰(弱化)」は、このシリーズ記事1回目 でお話した、「叱る」「怒る」といった対応になります。
一方、今日の「負の罰(弱化)」は、それとは正反対の対応です。

あなたに是非覚えていただきたいことは、以下の1つ。

「叱る」という「正の罰」とは正反対の、「叱らないことで、行動を減らすことができる対応がある」ということ。

これです。
前回の「消去」も、「叱らないことで、行動を減らすことができる対応」でした。
これから、まだいくつかの「叱らないことで、行動を減らすことができる対応」を、ご紹介していきます。
そして、シリーズ記事の最後で、1つ考えていただこうと思っています。



※1
ここで注意したいのは、「罰」という言葉の扱い方です。
一般的に「罰」といえば、「罰を与える」とか、「罰があたる」とか、大体「悪いことをしたら、その後に与えられるもの」という使われ方をしますね。
ところが、行動分析学では「行動が減る=罰」という風に定義しています。
ここで混乱する方が多いため、最近は「弱化」という言葉を使おうという行動分析家も増えてきました。


※2
「罰(弱化)」の反対に「強化」という言葉があります。
これもまた、多少誤解して覚えていらっしゃる方が多いのですが、「強化=褒める」ではありません。
「罰(弱化)」の定義と同様、「行動が増える=強化」という定義になっています。