トレーナー心得 その2「飼い主さんに『頑張れ』と言わない」 | わんこも、そして飼い主さんも

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トレーナー心得 その2

「飼い主さんに『頑張れ』と言わない」


いつの頃からか、飼い主さんに「頑張れ」と言わなくなりました。
昔は(といっても数年前ですが)、結構言っていたような気がします。

言わなくなったきっかけは、ある飼い主さんとの何気ない会話でした。

その方は、愛犬の問題行動に本当に悩んでいらっしゃって、僕のところに来られる前にも、数人の訓練士さんやトレーナーさんにお世話になっていました。
飼い主さんが言うには、誰に相談しても「頑張れ」と言われたそうなんですね。

「皆さん『頑張ればなんとかなる』って言うんですね。
 悪気はないと思うんです。
 でも、『頑張れば』ということは、
 『今のあなたは、頑張ってない』ってことですよね」

この話を聞いて、「頑張れ」という一言が持つ重みというか、相手に与える影響というのを考えました。
この飼い主さんがお世話になっていたプロの人たちも、決して「今のあなたは、頑張ってない」というつもりで言ったわけではないと思います。
純粋に、励ましの意味で言ったのだろうと。
でも、僕がお世話をさせて頂いている飼い主さん達を見ると、犬のしつけに何万も使って、トレーナーから「あれをしましょう、これをしましょう」と指示を出され、それをこなせば何とかなるんだと、毎日「頑張って」らっしゃるんだと思うんですね。

毎日毎日悩んでしまって、場合によっては夢にまで出てきて、決して安くはない金額をすでに使っていて…
そういう方に、「頑張れ」という言葉を投げかけるのは、実は意外に残酷なことなのかもしれません。

今では「頑張らないでください」と、必ず言います。

頑張ると、どうしても結果が欲しくなります。
でも、相手は犬であり、動物ですから、なんでもかんでも思い通りになるわけではありません。
じっくりゆっくりやって、時間をかけた果てに、「さて、どうなるか?」というのが、しつけや問題行動の改善だと思います。
いわばゴールのはっきりしない、マラソンみたいなもんですよね。
こんなものを、全力で頑張っちゃったら、どうしたって途中で息切れします。
それに、結果が欲しいとは言っても、すぐには出ないのでイライラします。
イライラすると、続けられません。
続けないことには、うまくいきません。

だから、飼い主さんには「あなたが頑張る必要はありません。その分、トレーナーが頑張りますから。肩の力を抜いて、のんびりついてきてください」と言います。

あ、でも中には「頑張っている自分が好きなんだ」という飼い主さんもいらっしゃるので、そういう場合は別なんですけども。

できるだけ楽に、それでもって楽しく、長く続けられるようなしつけを、心がけたいなと。