「飼い主は強い」と教える必要はない | わんこも、そして飼い主さんも

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「飼い主には力で勝てない。飼い主の方が強いんだということを、教えてあげる必要がある」

こんな話を、時々見たり聞いたりします。
「飼い主には勝てないんだということを、若いうちにガツンと教えることで、従順な犬に育ちます」みたいな。
今回は、これについて少し考えてみます。

どんな方法を取るにせよ「飼い主は強いということを教える」わけですから、少なからず犬と「対決」しなくてはいけないように思います。
戦って勝つことで、「飼い主の方が強いんだぞ」と見せつけると。

しかし、冷静に考えてみて下さい。
犬は「人間社会のルール」というものは、一切分かりません。
トイレの場所も分からないし、飼い主の手を噛んではいけないということも分かりません。
自分の居場所を守る為に唸ってはいけないということも分かりませんし、ベッドやソファーに上がってはいけないことも分かりません。
そういったことが分からないからこそ「しつけ」というものが、必要になんですね。
「しつけ」というのは、ある意味で「人間社会のルールを教える」と言えます。
では、その「ルール」を教えるのに、「力勝負で勝つ」必要はあるのでしょうか?

動物は「高圧的に迫ってこられたり、無理矢理何かをさせられたりする」と反発します
これは犬に限らず、人間も同様です。
上司や先輩、友人や親から「おれの方が偉いんだ!黙って言うことを聞け!」と言われたら、あなたも反発してしまいますよね?
仮に言うことを聞いたとしても、それはあくまで「言うことを聞かないと、後で怖い目にあうから」といった、後ろ向きな理由からだと思います。

当然「反発する人」「あまりしない人」という個性があります。
犬にも、そういった個性があります。
なので「あまり反発しない犬」なら、そんなに問題ではありません。
きっと力勝負をしても、簡単に勝てると思います。
勝てれば問題も起こりません。

でも、そもそも「あまり反発しない犬」なのですから、飼い主さんもわざわざ「対決しよう」とは思わないでしょう。
放っておいても、従順なわけですから。
ということは、飼い主さんが「対決しよう。勝たなくてはいけないと思う犬」というのは、「反発しやすい犬」ということになります。
この「反発しやすい犬」に対して勝負を挑むと、大体反発されます。
当たり前ですね。
そして犬の場合の「反発」というのは、「唸る」「噛みつく」というものになります。
そんな犬の姿を見た飼い主さんは、「この犬は従順ではない。何としても勝たなくてはいけない」と思い込みます
そしてまた、勝負を挑むわけです。
まとめるとこうなります。

 1 飼い主さんが「勝負しよう」と思う犬は、「反発する犬」
 2 「反発する犬」は、勝負を挑まれると「唸る」「噛みつく」
 3 唸られたりした飼い主は、更に「勝たなくてはいけない」と思い込む
 4 再度勝負を挑まれた犬は、更に強く反発する

以下ループ。
勝利を得るまで終わることのない戦いの日々です。

さて、「しつけ」とは「「ルールを教える」ということでした。
これは言い換えれば「色々なことを学習させる」ということになります。
しかし、この「勝負にあけくれる戦いの日々」の中で、犬は一体何を学ぶでしょうか?
飼い主さんが本当に教えたいことを、犬は学んでくれるでしょうか?

もう一度、冷静に考えてみましょう。
犬と人間の知能には、大きな差があります。
よく「犬の知能は、人間の3歳児程度」なんてことが言われます。
あなたは「人間の3歳児」相手に、力勝負を挑みますか?
わざわざ相手の土俵に上ることはありません。
こちらは頭を使って、相手にルールを教えていけばいいんです。
そして「反発」されない分、その方が学習効率は絶対に高いです。

力で勝負するのではなく、頭を使ってみて下さい。
きっと、分かってくれます。