怪談アンソロジー。『日本怪談 奇妙な場所』と内容は同じです。

 

「家」「坂」「沼」「場所」に作品が分類されています。「場所」というのは大雑把すぎて意味不明ですけど、いかにも「幽霊」がでそうなロケーションです。筒井康隆、内田百閒、小泉八雲、泉鏡花、澁澤龍彦……といった作家たちの作品が収録されていてとても文芸的。

 

なんですけど

 

「家」に分類されている、佐藤春夫『化物屋敷』は実話怪談が好きなひとも楽しめそうな作品です。この家で起きたことは稲垣足穂も書いています。稲垣足穂『黒猫と女の子』。合わせて読むと、こわさ倍増。『文藝怪談実話 東雅夫 編』には二作品が収録されています。

 

佐藤春夫『化物屋敷』。

渋谷の事故物件に住んでいたときの体験。

 

起きていることがなんだかリアルなんです。

 

『(略)自分は何故か先づこの階段が面白くないと思つた。(略)別だん勾配が急といふわけでもないのに眩暈を誘うやうな感じを伴ふのが不愉快であつた。』

 

佐藤春夫は初めてこの家に入ったときにこんなことを感じているんです。この「眩暈をさそうような感じ」。これがこわい。なにがこわいんだと思われるかもしれないけれど、『めまいがするトンネル』を読んでもらえばわかるように、わたしは心霊スポットでおなじような体験をしているんです。この描写があることで(わたしには)とてもリアリティのある作品に思えるんです。もしかしたら家自体が歪んでいたのかもしれませんけど……。

 

よくわからない眩暈のような感覚が起きることろ、重力がおかしいような感じがするところには、いまのわたしは絶対に近づかないです。後々ややこしいことになるのはいやですから。

 

佐藤春夫が住んだ家でもいろいろなことが起きます。住人が次々と精神を病んでいきます。『文藝怪談実話 東雅夫 編』にも同じような感想を残したんですけど、おかしな家に住んで幽霊みました、はまだいいのかもしれません(絶対イヤだけど)。出ていくきっかけになるじゃないですか。ああ、ここはヘンだなって。とってもわかりやすい。知らず知らず、家に同調するように、飲み込まれるように、精神を病んでいくのが恐ろしいと思うのですよ。

 

 

おもしろかった作品は

 

笹沢左保『老人の予言』 

旅館で相部屋になった老人が語ったこと。

 

小沢信夫『わたしの赤マント』 

都市伝説の真相を追いかけて……。