田中貢太郎の作品に知人が体験したことを書いた『妖影』という怪談があります。

 

古い知り合いを何度も見かけるので、そのたびに声をかけようとしたり追いかけようとするのだけれど、どうしても会うことができない、というような話です。

 

わたしもこれと似たようなことを経験したことがあるんです。といっても夢の中で。夢の話なんかくだらないと思うかもしませんけど、こんな夢を三ヵ月間以上ほぼ毎日みたんです。ちょっと不気味じゃないですか。

 

わたしも三日目くらいまではこんなこともあるんだなーなんてのんきにおもしろがっていました。でも一週間を超えたくらいからだんだん気持ち悪くなってきて、よく顔を合わせている友人に夢を見続けていることを話してみたんです。

 

怪談やオカルトの話はしたことがない、そういうことに興味がない友人のはずなのに「そのひとに連絡してみな。きっと亡くなっているよ」と真顔で返してきました……。

 

気軽に連絡できるならしていたと思います。だけど夢に出てくる知人とはすいぶんまえから疎遠になっていて、呼んでいたあだ名は覚えていても、もう名前も思い出せませんでした。おなじく疎遠になっている、かつての共通の友人のだれかに連絡をとれば、もしかしたら、そのひとの近況とか、連絡先がわかったかもしれませんけど、そこまでする理由が『夢を見続けているから』というのは、自分でもどうかしているとしか思えなくて気がすすみませんでした。

 

連絡して近況を確かめようか、どうしようか、とだらだらと迷って、同じ夢を四ヵ月弱見続けました。たかが夢だと思うかもしれませんけど、大げさじゃなくて本当におかしくなるかと思いました。毎日毎日同じ夢。それも名前も思い出せないひとを探す夢。そのひとに会わなかったら一生見続けるかも……友人がいった通りだったら……なんてことを考えたりもしました。

 

それがあるひとのおかげでぴたりとおさまったんです。

 

その当時わたしは趣味でタロットをやっていて、占いをするひとたちとSNSで繋がっていました。あるときよくやりとりをしていた霊感占いをしているひとからこんなメッセージが来たんです。

 

「なんか変なことが起きてるでしょ」

 

すぐに夢のことが浮かびましたけど、相手が霊感占いをしているひととはいえ、やたらと話せることじゃないし、それに疑うわけじゃないけどコールドリーディングっぽいと思ったので夢のことは黙っていました。

 

そしたら霊感占いのひとにこんなことをいわれました。

 

「なにが原因なのかわからないけどバリアがすごく薄くなっている。その状態だったら占いはしやすいだろうね。でも繋がらなくていいものまで繋がってしまう。その "なんちゃらコード(正確な名前は忘れました)" は外したほうがいい。最近、やたらと思い出すひと、何度も偶然ばったり出会うひとがいない?」

 

そこでわたしは夢のことを正直に伝えました。

 

霊感占いのひとは "なんちゃらコード" の外し方を教えてくれました。時間もお金もかからない、特定の信仰も必要がない方法でした。ちなみにバリアを強くする方法も教わりました。これは多分、結界。

 

教えてもらったことをやってみた夜、あることが起きて夢はみなくなりました。なにが起きたのかはあまりに出来すぎていて信じてもらえそうもないのでいまは省きます。金縛り中に起きたことなので、まあ、夢みたいなもんです。

 

夢に出てきた知人がどうしているかはいまも知りません。