上巻はこちら。
上巻にはおもしろい怪談作品が収録されていましたけど下巻は怪奇って感じです。怪奇小説集なんだから当然といえば当然。
好きな作品が載っていました。吉屋信子「鬼火」と半村良「箪笥」。
吉屋信子「鬼火」
怪談ではないし、かといって怪奇かっていうと怪奇って感じでもないんです。ホラーでもない。でもなーんかこわいんです。ヒトコワ。数ページの短い作品です。鋭いこわさ。この作品については『吉屋信子集 生霊』で感想を残しています。
半村良「箪笥」
怪談アンソロジーに入っていたりする作品。けど怪談って感じでもないんです。でもなーんかこわいんです。じわじわくるこわさ。この作品については『能登怪異譚』で感想を残しています。
伊波南哲「逆立ち幽霊」と柴田錬三郎「兵隊と幽霊」は怪談。けどこわくはないです。でも怪談です。怪談がこわくなくて、怪談じゃないものがこわい。なんてことはよくあります。
この本のなかで印象に残った作品は、平井呈一「真夜中の檻」と野坂昭如「骨餓身峠死人葛」。凄味と表現したらいいのかなんなのか……。圧倒されるというか、呆気にとられるというか……。迫力のある作品。好きです。
平井呈一「真夜中の檻」
山村のお屋敷で起こる物語。恐怖小説。ホラー的。なんですけど前半のなにか起きそうな怪しげな雰囲気は怪談っぽさがあっておもしろいです。この方が怪談を書いたらものすごくこわかったんじゃないかと想像したりもしました。読んでいてゾワゾワくるんです(前半部分)。この作品のすごいのは独特の凄味。どの部分からそう感じているのか自分でもよくわからないので説明できないんですけど、なんかすごいんですよ。
野坂昭如「骨餓身峠死人葛」もすごすぎます。