市朗怪全集 十』を聴いたら読みたくなった『三つの幽霊』『私は見た』。

 

『三つの幽霊』は遠藤周作が体験した三つの心霊現象の話。

 

なかでも作家の三浦朱門と一緒に体験した熱海の旅館の話がおもしろいんです。入り口は裏鬼門、トイレは鬼門にある旅館で起きた心霊体験。

 

実話怪談や体験談が好きなひとも楽しめる作品だと思います。「三つの幽霊」は『怪奇小説集』のKindle試し読みでほとんど読めてしまうので興味があるひとは読んでみるといいと思います。

 

起きている現象自体はありきたりなんですけど、書いてあるままのことが起きたのかはともかく、なにかが起きたのは本当なんじゃないかなと思えるような話です。

 

ここの場所って特定されているんでしょうかね。どこだったとしてもわたしが注目したのは「坂道を上がったところにある」「裏が崖だった」というところ。

 

高低差のある場所で怪奇体験に遭う話は多い、みたいなことを書いていたのは吉田会長(怪談作家・吉田悠軌)だったと記憶しているんですけど(まちがっていたらすみません)、この説を読んだときおもしろいなと思ったんです。というか鋭さを感じました。

 

というのも高低差がある場所は空気やらなにやらいろいろなモノの通りの変化が起きるポイントになりそうじゃないですか。土地が盛り上がっているということは山のようにエネルギー的なものが関係している場所があるかもしれないとも想像できますし。そういう微妙な変化がひとに影響を与えていると考えたらちょっとおもしろいなって。そんなこというとすべての坂道で怪奇現象が起きるのかといわれそうですけど……。

 

『私は見た』は二年後にカメラマンなどを引き連れて旅館の調査に向かった後日談。

 

そこで遠藤周作は崖を見ながら『海の風がここにぶつかるので、気圧がこの部分だけ異常になるのかもしれないね』と話しているんです。

 

崖の露出した土の色を見るとその旅館はそんなに古くから建っているようには思えなかったそうです。と考えると山を新たに削ったんじゃないかと想像したりもします。いろいろ妄想が膨らむ話です。

 

個人的には上の二作品ほどの切実さは感じないんですけど「恐怖の窓」も実話系として楽しめる作品。