1997年にホラー小説作家八人が参加して行われた百物語怪談会を再現した本。
 
会場に結界を張ったり、途中で窓ガラスの割れ目がこわいと訴える参加者が出てきたり……。こわい話をしているときの独特の雰囲気まで伝わってくるよう。とてもおもしろかったです。
 
有名な怪談も載っています。
三角屋敷の元住人、霜島ケイ「三角屋敷の怪」、
竹内さんが語る「山の牧場」、竹内義和「鬼伝説の山で」、
霊の声が録音されたカセットテープ、竹内義和「わたしにも聞かせて」など。
 

「三角屋敷」のことを書いた作品はいくつかありますが、わたしが一番好きなのは『日本怪奇幻想紀行 六之巻』に載っている霜島ケイ「実在する幽霊屋敷に住んで」。『日本怪奇幻想紀行』に書かれていることを読んで「三角屋敷」の話の印象が少し変わったんですよねぇ。

 
情景が頭に浮かんでゾッとしたのは森真沙子「海辺の宿で」。見知らぬ女が無言で部屋に入ってきて鏡台を開けて髪を直し始める。これだけでもこわいんですが、鏡越しにこっちを見ているというのがこわすぎる……。
 
井上雅彦「黒い家」は、体験者ならではの切実さを感じた話。
 
『心霊体験だと百パーセント信じているわけでもない』
『いまだに、あの町内には、近づくのもいや』
『僕にとってはホラーでもなんでもない現実』 
 
わたしもたった一度だけ恐怖を感じる怪奇現象を体験したことがあります。その体験はわたしとって恐怖を楽しむファンタジーでもホラーでも決してないです。どういうことなのか知りたい。でも深入りはしたくないという気持ち。
 
それとふしぎな印象を残したのは、田中文雄「猫を焼く」。幽霊は出てこないし、ふしぎなことが起こったわけでもない。ヒトコワ要素はあるといえばあるけど、そのことが印象に残っているわけでもない。幽霊話のなかにこのような話がポンと挟まれているからなのかもしれませんが、ふしぎな印象を残した話でした。
 

濃密な怪談本です。大満足。