





戦時中、フルトヴェングラーは「占領国では指揮しない」という信念を持っていたが、北欧への演奏旅行は例外で、これは最初の妻ツィトラがデンマーク人ということもあって繋がりがあったからだと言われている。ただ、『巨匠 フルトヴェングラーの生涯』(ヘルベルト・ハフナー著 最上英明訳 アルファベータ)によると、「以前はコンサートのあと、デンマーク国立管弦楽団の楽員たちと歓談したが、今回は誰も来なかった。「そこの雰囲気も非常に堅苦しく、よそよそしかったので、私はあとで、そもそもこの演奏会をおこなったことを大変に後悔しなければなりませんでした」」という証言が紹介されている。
幸運なことに、スウェーデン放送による録音のおかげで、大戦中の演奏をいくつか聴くことができる。その他に、戦後にストックホルム・フィルへの客演の録音記録としては、数少ないリハーサル風景と、まともな音質で聴ける録音として唯一知られる、ブラームスのドイツレクイエムを聴くことができる。
●1942年11月25日 ストックホルム ストックホルム・フィル
・R. シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』
・ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』第1幕前奏曲と「イゾルデの愛の死」
*この日は、他にベートーヴェンの交響曲第6番『田園』が演奏された
●1943年12月8日 ストックホルム ストックホルム・フィル他
・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』
●1948年11月12日 ストックホルム ストックホルム・フィル
・ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番 リハーサル風景
●1948年11月13日 ストックホルム ストックホルム・フィル
・ベートーヴェン:交響曲第8番
・ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番
・ベートーヴェン:交響曲第7番
●1948年11月19日 ストックホルム リンドベリ=トルリンド(S.) ゼーナーシュテット(Br.) ストックホルム・フィル他
・ブラームス:ドイツ・レクイエム
以上の他に、ウィーンフィルとの演奏旅行でストックホルムを訪れた際の演奏会が録音で残されており、1950年の方は良い録音状態で演奏会全体が残っている。センターのCD、WFHC-009/10(2CD)は、演奏会の最初に演奏されたスウェーデンとオーストリア国歌も含めた完全版である。LPは米ワルター協会のRR-399、RR-460(2LP)、RR-507を揃えて、ようやく国家を除く一つのプログラム全体を聴くことができる。
●1943年5月12日 ストックホルム ウィーンフィル
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』第1楽章
・シューベルト:交響曲第9番『グレイト』
・J. シュトラウス:皇帝円舞曲 最初の部分のみ
*この日は、『ロザムンデ』序曲も演奏された
●1950年9月25日 ストックホルム ウィーンフィル
・ハイドン:交響曲第94番『驚愕』
・シベリウス:交響詩『伝説(エン・サガ)』
・R. シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』
・ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
戦時中のストックホルムでの演奏は、仏協会のSWF-8403/4でまとめて聴くことができる。
<仏フ協会SWF-8403/4>
・R. シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』(1941/11/25 ストックホルムフィル)
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』第1楽章リハーサル風景(1951/12 or 1954ベルリンフィル)
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』第1楽章(1943/5/12 ウィーンフィル)
・シューベルト:交響曲第9番『グレイト』(1943/5/12 ウィーンフィル)
・J. シュトラウス:皇帝円舞曲 最初の部分のみ(1943/5/12 ウィーンフィル)
仏フ協会SWF-8403/4には「ストックホルムのフルトヴェングラー(1)」と書かれているが、(2)は出ていない。ストックホルムで演奏されたベートーヴェンの『第九』を収めた米DISCOCORP RR-205(2)は、ジャケットに幼い息子アンドレアスとのツーショット写真を使って雰囲気が良く、仏協会盤の続編と思いたくなる。
ストックホルム・フィルとの録音で、現存しているのを最もありがたく思うのは、ベートーヴェンの『第九』と交響曲第7番である。プロのオーケストラとして立派な仕事をしており、アセテート盤録音によって発生するノイズはあるものの、素晴らしい演奏を十分に伝えてくれている。戦後に客演した際のリハーサル風景が興味深いのは当然のことだが、交響曲第7番はバランスよく録音された名演なので貴重である。確かに、同じ日に演奏された交響曲第8番も、「ファンの前に最も早く現れた」この曲のレコードとして注目を浴びた経緯があるが、それ以上に、この曲の数少ない巨匠による演奏の記録という意味で重要である。
ベートーヴェンの交響曲第7番は、米ワルター協会RR-505で聴くことができる。このLPではワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』から第1幕前奏曲と「イゾルデの愛の死」も聴くことができる。
以上の3つのレコードで、大戦中に録音されたストックホルムの演奏で、LPになって出たフルトヴェングラーの演奏を全て聴くことができる。
写真:
屮好肇奪ホルムのフルトヴェングラー(1)」 仏フ協会SWF-8403/4(2LP)
⊆村租に仏フ協会の「ストックホルムのフルトヴェングラー(2)」といえる内容のベートーヴェンの『第九』 米DISCOCORP RR-205(2)(2LP)
ベートーヴェンの交響曲第7番他 米ワルター協会RR-505
*1950年9月25日、ストックホルムでのウィーンフィルの客演を聴くのに必要なレコード。ただし、演奏会冒頭の国歌演奏は含まれていない。
ぅ魯ぅ疋鵑慮魘繕並94番『驚愕』ウィーンフィル 米ワルター協会RR-505
ゥ轡戰螢Ε垢慮魘岨蹇愿狙癲淵┘鵝Ε汽)』とベートーヴェンの交響曲第5番『運命』 米ワルター協会RR-507
R. シュトラウスの交響詩『ドン・ファン』 米ワルター協会RR-460(2LP) ジャケットにはシュトラウスの曲名が全く書かれていないので、ベートーヴェンの『第九』の余白にオマケで入れたと思われる。