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チェトラ(Cetra)のLPの中にも、一つの演奏会を丸ごと収めたのがある。音質面で当たり外れが大きいこのレーベルのLPの中でも、ベルリンフィルのパリでのライブを収めたFE-45(2LP)はとても音が良い。極めてオリジナル・テープに近い音源からのLPであろう。CDでは伝わってこなかった音楽の生々しさが伝わってくるし、大きな感動を得ることができる。豊かな木管の中で、『未完成』交響曲でのオーレル・ニコレのフルートは、ふくよかな表情が素晴らしい。それにしても、素晴らしいソロ・オーボエ奏者はいったい誰なのだろうか。元々、デッドな響きの会場のせいか、音が固めだが、これを聞いてしまうと、CDの音はさらに固く聞こえて、繰り返し聴く気になれない。初めて世に出たCetraのLO-519(2LP)は、聞けない音ではないが、FE-45に比べるとかなり落ちる。LPでは、FE-45のみが、この熱狂的な演奏会の感動を伝えてくれると言っても良い。特に、このレコードが再現する『運命』は、聴く者に感動の涙を流させる不思議な力を持っている。フルトヴェングラーの真価を伝えるレコードの一つだ。

パリでの演奏会は、次のように2回、異なるプログラムで行われ、2日目が録音された。初日のプログラムは、全く同じ内容で演奏された1954年4月27日ベルリンでのRIASによる録音が残っているので、auditeのCDで楽しむことができる。

●1954年5月4日 ベルリンフィル パリ・オペラ座
・ヘンデル:合奏協奏曲op.6-5
・ブラームス:交響曲第3番
(休憩)
・ブラッハー:管弦楽のための協奏的音楽
・R. シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
・ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」第1幕前奏曲と「愛の死」

●1954年5月4日 ベルリンフィル パリ・オペラ座
・ウェーバー:歌劇『オイリアンテ』序曲
・ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』
・ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』

FE-45の解説には、当日の演奏会のレポートとして、フルトヴェングラーと親交があった女流小説家カルラ・ヘッカーの回想が、解説の中で引用されている。「きらめくような熱がこもった演奏によって呼び起こされた興奮が押し寄せる波、それぞれの作品における熱狂的な締めくくり、そして文句なしの大成功……「Unique, merveilleux!(全く、奇跡のようだ!)」と劇場にいた誰もが、興奮して叫んでいた。パリのフルトヴェングラーは、立派な音楽家として尊敬されていただけではなく、ヨーロッパのドイツ人、つまりヨーロッパ人芸術家として賞賛されていた。コンサート中の演奏会場では、誰も気づかないうちに雰囲気が変わって、戦争と占領による酷い記憶は、全く消えてしまったかのように見えた。」

チェトラ(FONIT CETRA)の「フルトヴェングラー・エディション」をまとめると次のようになる。

*チェトラはイタリアのレーベルなので、イタリアの放送局音源については良い音の傾向があるが、ドイツの放送局の音源については、良いのとそうでないのがある。一つひとつドイツの放送局の音源かどうかを確認してみた。RIAS音源で、独auditeのLPセットに含まれなかった演奏(★)含まれた演奏(☆)をチェックしてみたが、意外に少ない。SFB音源は□である。

FE-1
・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲★(1947年9月28日) メニューイン(Vn)ベルリンフィル

FE-2
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 (1952年1月19日)スカルピーニ(Pf)ローマ・イタリア放送交響楽団

FE-3
・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 (1952年3月7日)デ・ヴィート(Vn)トリノ・イタリア放送交響楽団

FE-4
・ベートーヴェン:交響曲第7番□ (1953年4月14日) ベルリンフィル

FE-5
・ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』(1952年1月10日)ローマ・イタリア放送交響楽団

FE-6
・ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』(1952年1月19日)ローマ・イタリア放送交響楽団

FE-7
・ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』(1952年1月10日)ローマ・イタリア放送交響楽団

FE-8 / 10(3LP)
・ベートーヴェン:歌劇『フィデリオ』(1953年10月12日)ウィーンフィル他

FE-11
・シューベルト:『ロザムンデ』序曲★(1953年9月15日)ベルリンフィル
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』☆(1953年9月15日)ベルリンフィル

FE-12
・シューベルト:交響曲第9番『グレイト』☆(1953年9月15日)ベルリンフィル

FE-13
・ブラームス:交響曲第1番□(1953年5月18日)ベルリンフィル

FE-14
・ストラヴィンスキー:3楽章の交響曲 (1950年8月15日)ウィーンフィル
・ストラヴィンスキー:バレエ音楽『妖精の接吻』□(1953年5月18日)ベルリンフィル

FE-15
・オネゲル:交響的断章第3番□(1952年2月10日)ベルリンフィル
・ドビュッシー:夜想曲より「雲」と「祭り」 (1951年5月1日)ベルリンフィル
・ラヴェル:スペイン狂詩曲 (1951年10月22日)ウィーンフィル

FE-16
・ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 (1952年1月27日)ボスコフスキー(Vn)ブラベッツ(Vc) ウィーンフィル
・ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲☆(1950年6月20日)ベルリンフィル

FE-17(2LP)
・ブルックナー:交響曲第8番 (1954年4月10日)ウィーンフィル

FE-18 
・モーツァルト:交響曲第40番 (1949年6月10日)ベルリンフィル
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 (1954年5月15日)リフェビュール(Pf)ベルリンフィル

FE-19(3LP)
・モーツァルト:歌劇『魔笛』(1951年8月1・6日)ウィーンフィル他

FE-20(2LP)
・ワーグナー:楽劇『神々の黄昏』第3幕 (1952年5月31日)ローマ・イタリア放送交響楽団他

FE-21(3LP)
・ベルリオーズ:劇的物語『ファウストの劫罰』(1950年8月26・27日)ルツェルン音楽祭管弦楽団他

FE-22
・ヒンデミット:交響曲『世界の調和』★(1952年8月30日)ウィーンフィル
・ヒンデミット:管弦楽のための協奏曲★(1950年6月20日)ベルリンフィル

FE-23(4LP)
・モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』(1953年7月27~8月28日)ウィーンフィル他

FE-24(3LP)
・ウェーバー:歌劇『魔弾の射手』(1954年7月26日)ウィーンフィル他

FE-25
・ワーグナー:歌劇『ローエングリン』第3幕から、4つの断片(「前奏曲」と「結婚行進曲」を含めた6曲)(1936年7月19日)バイロイト祝祭管弦楽団
・ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』第1幕前奏曲と「愛の死」☆(1954年4月25~27日)ベルリンフィル
・ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』第2幕と第3幕からの断片 (1947年10月3日)ベルリン国立歌劇場管弦楽団他

FE-26
・プフィッツナー:歌劇『パレストリーナ』から3つの前奏曲(第1・2・3幕)(1949年6月10日) ベルリンフィル
・プフィッツナー:交響曲第2番 (1949年8月7日)ウィーンフィル
・ブラッハー:管弦楽のための協奏的音楽★(1954年4月25・27)ベルリンフィル

FE-27(3LP)
・モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』(1953年8月7または11日)ウィーンフィル他

FE-28(3LP)
・ヴェルディ:歌劇『オテロ』(1951年8月7日)ウィーンフィル他

FE-29
・マーラー:歌曲集『さすらう若人の歌』(1951年8月19日)フィッシャー=ディースカウ(Br) ウィーンフィル
・マーラー:歌曲集『さすらう若人の歌』(1952年11月30日)ペル(Br) ウィーンフィル

FE-30(2LP)
・ヴォルフ:歌曲全22曲 (1953年8月12日)シュヴァルツコップフ(S)フルトヴェングラー(Pf)

FE-31
・ヘラー:チェロ協奏曲第2番□(1949年10月18日)ヘルシャー(Vc) ベルリンフィル
・フォルトナー:ヴァイオリン協奏曲★ (1949年12月18・19日) タッシュナー(Vn)ベルリンフィル

FE-32(2LP)
・ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』☆(1947年5月25日) ベルリンフィル
・ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』☆(1947年5月25日) ベルリンフィル

FE-33(2LP)
・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』 (1951年1月6~10日) ウィーンフィル他
・ベートーヴェン:交響曲第1番 (1952年11月29日) ウィーンフィル

FE-34(3LP)
・バッハ:『マタイ受難曲』(1954年4月14~17日) ウィーンフィル他

FE-35
・メンデルスゾーン:序曲『フィンガルの洞窟』(1951年8月19日)ウィーンフィル
・メンデルスゾーン:劇音楽『真夏の夜の夢』序曲★(1947年9月28日)ベルリンフィル
・メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 (1952年3月11日)デ・ヴィート(Vn)トリノ・イタリア放送交響楽団

FE-36(2LP)
・フルトヴェングラー:交響曲第2番 (1952年12月15日) ヘッセン放送交響楽団

FE-37(3LP)
・ワーグナー:楽劇『ラインの黄金』(1950年3月)ミラノ・スカラ座管弦楽団他

FE-38(5LP)
・ワーグナー:楽劇『ヴァルキューレ』(1950年3月)ミラノ・スカラ座管弦楽団他

FE-39(5LP)
・ワーグナー:楽劇『ジークフリート』(1950年3月)ミラノ・スカラ座管弦楽団他

FE-40(5LP)
・ワーグナー:楽劇『神々の黄昏』(1950年3月)ミラノ・スカラ座管弦楽団他

FE-41(3LP)
・R.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』(1951年5月1日)ベルリンフィル
・R.シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』(1954年5月15日)ベルリンフィル
・R.シュトラウス:交響詩『死と変容』(1954年5月15日)ハンブルク国立フィルハーモニー
・R.シュトラウス:家庭交響曲 (1944年1月9~12日)ベルリンフィル
・R.シュトラウス:4つの歌曲 (1942年2月15~17日)アンデルス(Tn)ベルリンフィル
・R.シュトラウス:4つの最後の歌 (1950年5月22日)シュヴァルツコップフ(S)フィルハーモニア管弦楽団

FE-42(3LP)
・ブルックナー:交響曲第5番 (1951年8月19日)ウィーンフィル
・ブルックナー:交響曲第7番 (1951年5月1日)ベルリンフィル

FE-43 (3LP)
・ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』第2幕と第3幕 (1947年10月3日)ベルリン国立歌劇場管弦楽団他
・ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』第1幕前奏曲と「愛の死」 (1952年3月11日)トリノ・イタリア放送交響楽団

FE-44 (3LP)
・ベートーヴェン:歌劇『フィデリオ』(1950年8月5~22日)ウィーンフィル他

FE-45(2LP)
・ウェーバー:歌劇『オイリアンテ』序曲 (1954年5月4日)ベルリンフィル
・ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 (1954年5月4日)ベルリンフィル
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』(1954年5月4日)ベルリンフィル
・ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』 (1954年5月4日)ベルリンフィル

FE-46(2LP)
・グルック:歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』(1951年4月7日)ミラノ・スカラ座管弦楽団他

FE-47(2LP)
・ワーグナー:楽劇『ヴァルキューレ』第1幕(1952年1月14・15日)ローマ・イタリア放送交響楽団他
・ワーグナー:ジークフリート牧歌(1952年6月6日)トリノ・イタリア放送交響楽団
・ワーグナー:楽劇『神々の黄昏』から「夜明けとジークフリートのラインへの旅」(1952年6月6日)トリノ・イタリア放送交響楽団他
・ワーグナー:歌劇『さまよえるオランダ人』序曲 (1952年6月6日)トリノ・イタリア放送交響楽団

FE-48
・ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第2番 (1947年6月9日)ハンブルク国立フィルハーモニー
・ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番 (1950年7月13日)アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
・ベートーヴェン:交響曲第8番□(1953年4月14日)ベルリンフィル

FE-49
・ベートーヴェン:交響曲第4番 (1953年9月4日)ウィーンフィル
・ベートーヴェン:『大フーガ』 (1954年8月30日)ウィーンフィル

FE-50
・グルック:歌劇『アウリスのイフィゲニア』序曲(1952年12月15日) ヘッセン放送交響楽団
・グルック:歌劇『アルチェステ』序曲(1951年9月5日)ベルリンフィル
・シューベルト:『ロザムンデ』序曲(1952年3月11日)トリノ・イタリア放送交響楽団
・ベートーヴェン:『エグモント』序曲 (1953年9月4日)ウィーンフィル
・ウェーバー:歌劇『魔弾の射手』序曲(1952年12月7日)ウィーンフィル他
・ウェーバー:歌劇『オイリアンテ』序曲 (1954年5月14日)ベルリンフィル

CFE-101(18LP) FE-37~FE-40を箱に入れたセット
・ワーグナー:楽劇『ニーベルングの指輪』(1950年3月)ミラノ・スカラ座管弦楽団他

コンサートを中心に見てきたが、このエディションでは、オペラの音が素晴らしい。すでに述べた通り、ミラノの『リング』は音としても解説書の充実度からも、このエディションでの最高傑作である。当時考えられる最高の音質だったことは間違いないし、その後、このテープは劣化して使えなくなったといわれていて、CD化の際にはこのレコードを板起こしすることから始められているので、この音源を最高の音で聴けるLPということになる。また、「ウェーバーの『魔弾の射手』」の記事で述べたことだが、少なくとも、ザルツブルクのオペラについては、フルトヴェングラー家から貸し出されたアルフレード・クンツが録音したテープということなので、これも当時最高の音源を使用したと考えられる。

全体的に、ベルリンでの録音は出来不出来の差があって、どちらかというと良くないが、イタリアでの演奏は良い音のが多い。例えば、FE-2のローマ録音のベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は、大戦中のベルリンフィルとの良い録音があるために注目されにくいが、まずまずの音質で名演が楽しめる。

FE規格よりも古い、LO規格のCetra盤は次の通りである。

LP-6(3LP)
・ヴェルディ:歌劇『オテロ』(1951年8月7日)ウィーンフィル他

LO-7(4LP)
・モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』(1954年8月3~18日)ウィーンフィル他

LO-8(3LP)
・モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』(1953年8月7または11日)ウィーンフィル他

LO-9(3LP)
・モーツァルト:歌劇『魔笛』(1951年8月1・6日)ウィーンフィル他

LO-19(2LP)
・グルック:歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』(1951年4月7日)ミラノ・スカラ座管弦楽団他

LO-21(3LP)
・ウェーバー:歌劇『魔弾の射手』(1954年7月26日)ウィーンフィル他

LO-86(4LP)
・ワーグナー:楽劇『ヴァルキューレ』 (1950年3月9~16日)ミラノ・スカラ座管弦楽団他

LO-501(3LP)
・R.シュトラウス:4つの最後の歌 (1950年5月22日)シュヴァルツコップフ(S)フィルハーモニア管弦楽団

LO-508(3LP)
・バッハ:『マタイ受難曲』(1954年4月14~17日) ウィーンフィル他

LO-510
・マーラー:歌曲集『さすらう若人の歌』(1951年8月19日)フィッシャー=ディースカウ ウィーンフィル
*オッットー・クレンペラー指揮、ジョージ・ロンドンによる『子どもの不思議な角笛』とのカップリング

LO-519(2LP)  パリ・ライブ
・ウェーバー:歌劇『オイリアンテ』序曲 (1954年5月4日)ベルリンフィル
・ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 (1954年5月4日)ベルリンフィル
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』(1954年5月4日)ベルリンフィル
・ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』 (1954年5月4日)ベルリンフィル

LO-529(2LP) ルガーノ・ライブ
・ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』 (1954年5月15日)ベルリンフィル
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 (1954年5月15日)リフェビュール(Pf)ベルリンフィル
・R.シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』(1954年5月15日)ベルリンフィル

LO-530(3LP)
・ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』(1952年12月8日) ベルリンフィル
・ベートーヴェン:交響曲第8番 (1954年8月30日) ウィーンフィル
・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』 (1954年8月22日) フィルハーモニア管弦楽団

ザルツブルクでのオペラ録音が重複しているが、他のコンサート録音については、LO規格でしか出ていないのもある。コンサートのレコードには、解説書は付いてない。オペラについては、イタリア語のみではあるが、歌詞と解説が付いている。ザルツブルクのオペラについては、LO規格よりもFE規格の方が音が良くて聴きやすい。よりオリジナル・テープに近いテープという訳ではなく、別の音源のように聞こえる。

LO規格の全部が「過去の遺物」と化したわけではない。『マタイ受難曲』については、FE規格も悪くないが、LO規格の方が自然な音が鳴っている部分もあるので、それぞれ、一長一短であるように思う。より良い音で聴ける伊MOVIMENTO MUSICA 03. 008 (3LP)は、さらに入手難なので、どうしてもLPで聴くにはチェトラのどちらかのセットということになる。FE-34(3LP)は、LO規格とは別のテープなのか、同じテープに手を加えたのか、よく分からない。もしもテープに手を加えているとしたら、元々、こもり気味な音をはっきりさせるために修正したのであろう。中低音の動きはLO規格の方がよく分かる。FE規格では、特に曲の初めの方が聞き疲れするような感じだが、だんだん、気にならなくなってくる。FE規格を聴く場合は、中低音を少し大きくするとちょうど良くなる。

ウィーンフィルとの最後の演奏会からのベートーヴェンの交響曲第8番は、とびきり良い音で残されているわけではないが、LPで聴くにはLO-530(3LP) が一番である。この時期には、巨匠が死期を感じていたであろう。

スイスのルガーノでの演奏会全体を収めたLO-529(2LP)は、一つの演奏会全体を楽しめるという意味で貴重であるし、フルトヴェングラーのLO規格のLPの中では一番音が良い。恐らく、オリジナルに限りなく近いテープを使っているのだろう。『田園』交響曲の第3楽章提示部のリピートは、演奏に瑕疵があるのか、或いは、テープの痛みを補ったためか、2回同じ録音が使われている。よく聴かないと分からないので、大きな問題ではないだろう。イヴォンヌ・ルフェビュールをソリストに迎えたモーツァルトのピアノ協奏曲第20番は素晴らしい名演である。締めくくりは、得意のシュトラウスだ。このプログラム全体を聴けるのは、日本国内盤を除くと、LO-529(2LP)しかない。尚、レコードには4月15日録音と書かれているが、5月15日が正しい。

●1954年5月15日 ベルリンフィル アポロ劇場 ルガーノ(スイス)
・ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番(Pf:イヴォンヌ・ルフェビュール)
・R.シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』


写真:
1954年5月4日、パリ・オペラ座でのベルリンフィルの演奏会全体を収めたFE-45(2LP)
FE-2では、1952年1月19日、スカルピーニ(Pf)とローマ・イタリア放送交響楽団と一緒に演奏したベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を聴くことができる。
1954年8月30日、ウィーンフィルと演奏したベートーヴェンの交響曲第8番が聴けるLO-530(3LP)
1954年5月15日、スイスのルガーノでのベルリンフィルの演奏会全体を収めたLO-529(2LP)