



フルトヴェングラーは最も尊敬された指揮者であるが故に、残された録音のほとんど全てが、商品化されて一般の人びとが聴ける数少ない音楽家である。21世紀に入ってから、一時期、影を潜めたLPが再び復権して、市場に増えてきている。やはりディジタル化された音源や、ディジタル化された修復音源は、技術が向上してきているとはいえ、限界があり、基本的には、本来の音楽の感動を伝えるに至っていないからであろう。この巨匠に限らず、音楽の感動を得るためには、ディジタルでは基本的に不十分なので、レコードに頼らざるを得ない。
あらためて振り返って見ると、この巨匠の音楽を知るために、特に優先的に聴くべき音源は、1952年に録音されたワーグナー『トリスタンとイゾルデ』以降の商業録音、良い録音で残されたRIASによるライブ録音、そして第2次世界大戦中のマグネットフォン録音であろう。というのは、録音状態が良くないと、本来の演奏の凄さが伝わりにくくなってしまうからである。
ディジタル修復音源の中で、特に印象深かったのがPRISTINE CLASSICALによる、ローマ放送交響楽団他によるワーグナーの『ニーベルングの指輪』(1953年)である。長時間の楽劇が、感動であっという間に時間が過ぎ去ってしまう段階まで音が修復されている。とはいえ、『ローマのリング』については、エリーザベト未亡人の働きかけでようやくEMIが出したLPセットが一番の好みである。
このシリーズを終えるにあたって、私個人が、気に入ってよく聴くフルトヴェングラーの音源を紹介したい。
<LPで聴く、お気に入りのフルトヴェングラー>
フルトヴェングラーの指揮するオーケストラの音色には、はっきりと指揮者の個性が刻印されているので、それを無理なく伝える録音の良さがあることが重要である。また、演奏会の流れをとても大切にしていた指揮者なので、ライブ録音を聴く時には、一回分の演奏会全体を聴くと、とても充実感がある。
●独フルトヴェングラー協会 F 666.156/7M
*1949年6月10日ベルリンフィルとのヴィースバーデン国立劇場での演奏会
・プフィッツナー:歌劇『パレストリーナ』から3つの前奏曲
・モーツァルト:交響曲第40番
・R. シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』
・ブラームス:交響曲第4番
●独フルトヴェングラー協会 F 666 624/5M
*1953年4月14日ベルリンフィルとのティタニア・パラストでの演奏会
・ベートーヴェン:交響曲第8番
・R・シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』
・ベートーヴェン:交響曲第7番
●独フルトヴェングラー協会 F 669.056/7
*1953年5月31日ウィーンフィルとのウィーン楽友協会での演奏会(通称DGG音源)
・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』
*1952年11月30日ウィーンフィルとのウィーン楽友協会での演奏会から
・ベートーヴェン:交響曲第1番
●EMIのブラームス管弦楽曲セット独EMI 1C 149-53420~6M(7LP)から、「ハイドン変奏曲」と二重協奏曲と仏EMI 2701241の組み合わせ、または、日東芝EMI WF60021と WF60072の組み合わせで、1952年1月27日 ウィーンフィルのプログラム全体を楽しむ
・ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
・ブラームス:ヴァイオリン、チェロとオーケストラのための協奏曲
(ウィリ・ボスコフスキー(Vn)エマニュエル・ブラベッツ(Vc))
・ブラームス:交響曲第1番
●独DGG LPM-18859と伊Cetra FE-15、独DGG 2535 804、独DGG 2535 162を組み合わせて1952年2月8, 9 & 10日の「ベルリンフィル創立70周記念演奏会」のプログアム全体を楽しむ
・ベートーヴェン:大フーガ(ワインガルトナー編)
・オネゲル:交響的断章第3番
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』
・ブラームス:交響曲第1番
●伊FONIT CETRA FE-23(4LP) ウィーンフィル他 (1953年 ザルツブルク音楽祭)
・モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』K. 527 全曲
●伊FONIT CETRA FE-45(2LP)
*1954年5月4日ベルリンフィルとのパリ・オペラ座での演奏会
・ウェーバー:歌劇『オイリアンテ』序曲
・ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』
・ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
●独DGG LP-10603, 独DGG2535 805 ベルリンフィル(1953年 スタジオ録音)
・シューマン:交響曲第4番
●独DGG LPM-18015/6, 独DGG 2535 808 ベルリンフィル(1951年 スタジオ録音)
・シューベルト:交響曲第9番『ザ・グレイト」
・ハイドン:交響曲第88番『V字」
●独DGG 2535821 ベルリンフィル (スタジオ録音)
・ウェーバー:歌劇『魔弾の射手』序曲(1935年録音)
・ウェーバー:歌劇『魔弾の射手』第3幕導入曲(1935)
・メンデルスゾーン:序曲『フィンガルの洞窟』op.26(1930)
・メンデルスゾーン:劇音楽『真夏の夜の夢』序曲op.21(1929)
・ウェーバー:舞踏への招待op.65(1932)
●独DGG LPM-18960
・モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』序曲(1933/11 ベルリンフィル ベルリン音楽大学 スタジオ録音)
・モーツァルト:歌劇『後宮からの逃走』序曲(1933/11 ベルリンフィル ベルリン音楽大学 スタジオ録音)
・R.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』(1947/9/16 ベルリンフィル ゲマインデハウス 放送録音)
・R.シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』(1943/11/13-16 ベルリンフィル 旧フィルハーモニー ライブ録音)
・モーツァルト:セレナード第13番『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』(1935-1937/6 ベルリンフィル ベルリン音楽大学 スタジオ録音)
●独エレクトローラ HZEL-71(疑似ステレオ盤) ウィーンフィル(1950~1954年 スタジオ録音)
・交響詩『死と変容」 作品24
・交響詩『ドン・ファン」 作品20
・交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 作品28
●英ALP-1135 スタジオ録音
・メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 メニューイン(Vn)ベルリンフィル (1952年)
・ベートーヴェン:ロマンス第1番、第2番 メニューイン(Vn) フィルハーモニア管弦楽団 (1953年)
●米Victor LM-1142 / 仏HMV FALP-122 メニューイン(Vn) ルツェルン祝祭管弦楽団 (1949年 スタジオ録音)
・ブラームス・ヴァイオリン協奏曲
●伊MOVIMENTO MUSICA 03. 008 (3LP)、伊Cetra LO-508
*1954年4月ウィーンフィル他とのコンツェルトハウス大ホールでの演奏会
・バッハ:『マタイ受難曲』 BWV. 244
●伊FONIT CETRA CFE-101(18LP) ミラノ・スカラ座管弦楽団他 (1950年)
・ワーグナー:楽劇『ニーベルングの指輪』(全曲)
●英ALP 1030 フィルハーモニア管弦楽団(1952年 スタジオ録音)
・ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』(全曲)
●英ALP 1011 / 仏FALP 188 ウィーンフィル (スタジオ録音)
・ハイドン:交響曲第94番『驚愕』(1951年)
・ブラームス:『ハイドンの主題による変奏曲』(1949年)
●英ALP 1060 ウィーンフィル (1952年 スタジオ録音)
・ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』
●英ALP 1130/2 ウィーンフィル (1953年 スタジオ録音)
・ベートーヴェン:歌劇『フィデリオ』(全曲)
●英ALP-1286/87 / 仏FALP 381/2 バイロイト祝祭管弦楽団他 (1951年 ライブ録音)
・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』
●仏HMV FALP-852/FALPS-853 ベルリンフィル (1949年 放送録音)
・ブルックナー:交響曲第7番
●米Victor LHMV-1020 ウィーンフィル (1950-1951年 スタジオ録音)
・シューベルト:交響曲第8番『未完成』
・ニコライ:『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲
・シューベルト:『ロザムンデ』からバレー音楽第2番と間奏曲第3番
・ウェーバー:『オベロン』序曲
●米Turnabout TV4408 ・独EMI 027 29 06661 ウィーンフィル (1943年 スタジオ録音)
・ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』
●日東芝EMI株式会社WF-60005 ウィーンフィル (1950年 スタジオ録音)
・ベートーヴェン:交響曲第4番
●ソ連メロディア 33D-09083/4 水色大聖火 Gost-56 / AKKORD Gost-56 ベルリンフィル(1943年または1944年 全楽章放送録音)
・ベートーヴェン:交響曲第4番
●ソ連メロディア D-05800/1 AKKORDまたはリガ Gost-56 ベルリンフィル(1944年 放送録音)
・ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
●ソ連メロディア 33D-010851/4 (2枚組)AKKORD Gost-56 / ピンク小聖火 Gost-61 ベルリンフィル(1942年)
・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』
●ソ連メロディア 33D-027779/80 ブルーまたはピンク・ダブルレター Gost-68 ベルリンフィル(1943年)
・ベートーヴェン:交響曲第7番
●ソ連メロディア M10-42555/8(2枚組)青レーベル Gost-73 ベルリンフィル
・シューマン:チェロ協奏曲(マヒェラー)(1942年)
・ブルックナー:交響曲第5番(1942年)
●ソ連メロディア M10-45949 008 赤レーベル Gost-80 ベルリンフィル
・ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』第一幕への前奏曲と「愛の死」(1942年)
・ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第一組曲 (1943年)
●ソ連メロディア M10-46967/70(2LP)ホワイトレーベル Gost-80 レーン(Vn) ベルリンフィル(1944年 旧フィルハーモニーでの最後の演奏会)
・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 エーリッヒ・レーン(Vn)
・R. シュトラウス:家庭交響曲
●東独VEB ETERNA 7 20 158(10インチ)ベルリンフィル (1944年 放送録音)
・モーツァルト:交響曲第39番
●英UNIC-109/110 ウィーンフィル (1944年 放送録音)
・ブルックナー:交響曲第8番
●仏Tahra KKC-1030(7LP BOX)「フルトヴェングラー名演集」(ライブ)から
・ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』 ベルリンフィル(1952年)
・ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』 ルツェルン祝祭管弦楽団他 (1954年)
*『合唱』KKC 1052/53(audite 80.461)(2LP)
●独audite 87.101
Edition Wilhelm Furtwängler – RIAS recordings with the Berlin Philharmonic on 14 LPs
・RIAS音源による戦後のベルリンフィルとのライブ集
*独DGG 2535 804の『ロザムンデ』序曲と合わせて、1953年9月15日のプログラムや、1954年5月25日のベートーヴェン・プログラムを楽しむ。
最後に、きちんと音の良いアナログのままLPで出して欲しい録音
・1953年10月12日 ウィーンで上演されたベートーヴェンの歌劇『フィデリオ』
・1954年4月 ウィーンで演奏されたバッハの『マタイ受難曲』
・1954年5月4日 パリ・オペラ座でのベルリンフィル・ライブ
・1954年8月30日 ザルツブルクでのウィーンフィルとのベートーヴェン・プログラム
・自由ベルリン放送収録の集大成
・ウィーンフィルのアーカイブに残された戦後の楽友協会でのライブ録音
写真:
.侫襯肇凜Д鵐哀蕁爾離汽ぅ麁?螢檗璽肇譽ぅ函1923年、トゥルーデ・フライシュマンによる撮影。
*表面には、1929年2月22日の日付とサインが書かれている。この日、ハンブルクでベルリンフィルとのコンサートが行われた。
▲櫂張瀬犁榲舵瀉脇發砲△襯侫襯肇凜Д鵐哀蕁爾住んだ家
ぅ魯ぅ妊襯戰襯のフルトヴェングラーの墓