イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

イメージ 7

イメージ 8

イメージ 9

イメージ 10

33D-05800/1 ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
(1943年6月27-30日の時期 旧フィルハーモニーでの放送用セッション録音)

フルトヴェングラーの全レコードの中で、一番の傑作は、大戦中にベルリンフィルとラジオ放送のためにセッション録音したベートーヴェンの『運命』である。プリ・メロディアの時期にプレスされたレコードでないと、その良さが分からない。つまり、Gost-56(1956~1961年製造)かGost-61(1961~1967年製造)と書かれたレーベルが貼られたレコードが良い。

フルトヴェングラーのレコードで、オールド・メロディアがプレスされた場所は、モスクワとレニングラード、リガ、タシュケントである。場所が変われば製造する技術者が異なり、音も変わる。『運命』について、入手できたタシュケント以外の3カ所のプレスを聞き比べてみると、レニングラード・プレスのレコードは、ほとんど何も調整していないような自然な音で聞こえる。リガ・プレスは調整しているかどうか分からないが、音はいちばん鮮明だし、低音がしっかりしていて聞き応えがある。他のと比べて圧倒的にレコードの厚みがあるずっしりとした作りで、姿も中身もトップ中のトップのコレクターズ・アイテムといえる。入手も一番難しい。灯台や松明(聖火)レーベルで知られて板起こしCDに最もよく使われるモスクワ・プレスのレコードは、響きは悪くないが、鮮明度では3つの中でいちばん劣る。トーチ(松明)レーベルが付いたレコードが人気がある理由は、首都モスクワでプレスされたということからくる先入観によると考えられ、悪い音ではないが、比較すると、レニングラード・プレスよりも若干劣るというのが正直なところである。

レニングラード・プレスのレーベルをよく見ると、少しずつ違いがあるのが分かる。しかしながら、今回写真で紹介しているレコードの形状は、どれもグルーブガードなしのフラット盤で、レーベル付近も平らであることから、プレスした機械は同じと考えられる。マトリックスも同じで、A面がD-05800/1-1でB面がD-05801/1-1である。音自体も大差はなく、差があるとすれば、プレスの善し悪しである。オールド・メロディアに限らず、どんなレコードでも起こり得る違いで、オールド・メロディアについては、特に「個体差が大きい」とも言われている。

まず、手元の「大33」レーベルには、白地に緑文字と黄色地に緑文字の2種類があり、白地の方が古い時期と考えられる。なぜなら、黄色地のレーベルの色は、同じ黄色の「アコード」レーベルと同じ黄色が使われているからである。3種類の「アコード」と書かれたレコードの中には、A面がGost-56でB面にGost-61と書かれたレコードが存在する。それには枠が書かれていない。これが3つの中では最後の時期であろう。このような過渡期に作られた「枠無し」の他に、もっと前に作られた「枠有り」がある。枠については2種類有り、ラッパを持った人が三角形で囲まれたのと、それに加えて円いレーベルの輪郭沿いに半円を描く枠が書かれたのがある。後者の方が珍しく、他のアーティストのアコード盤でさえも見たことがない。2種類の「枠有り」レーベルの内、どちらが先に作られたのかや、何らかの意味があるのかは不明である。

それぞれが入っていたジャケットに目を向けてみると、大33レーベルには「ソビエト連邦」を意味すると思われるロゴが書かれていて、それ以外には「アコード」のマークが、ジャケットの裏表のどちらかに入っている。フルトヴェングラーの絵が使われたジャケットは、フルトヴェングラーのレコードのためだけに使われたのではなく、他のアーティストのレコードにも使われた。どうやら共通ジャケットの一つとして見なして良いようである。ロシアの都市や、民族的な模様を取り入れた共通ジャケットや、シルクスクリーンで印刷したような作曲家か演奏家の肖像をデザインしたジャケットは、同じレコードに対して色々なヴァリエーションがあるので見比べる楽しみがあるし、自分だけの特別な一枚として大切にしたい気持ちが沸き起こる。

レニングラードでプレスされたオールド・メロディアは、音だけでは製造時期の変遷が全く分からないので、レコードを入手する際に、レーベル・デザインで音の善し悪しを予想することは無意味といえる。ここでプレスされたGost-56については、きちんと再生すると、5種類のレーベルのレコードはどれも同じく音が良い。より古いプレスのレコードは、溝とレコード針がきちんとフィットするかどうかという問題があるが、きちんと再生できた音はほとんど同じである。

ここでは全て同じ形状のレコードのみを取り上げて、全く言及しなかったが、「枠無し」アコードには、レコードの形状にいくつかヴァリエーションがある。経験を積むと、レーベルだけではなく、レコードの形状でもプレスの変遷が分かるが、『運命』レニングラードGost-56の場合、それが分かってもどれが音が良いかの決定的な決め手にはならない。希少性の高いレコードのため、手に入れる選択においては、レコードの状態の良さが判断基準の第一で、実際に良い音が出るかどうかプレスの善し悪しが第二の判断基準と言うことになる。この場所で作られたレコードの狙い目は、実はアコード・レーベルのGost-56とGost-61の過渡期に近いレコードである。音にこだわるなら、このレコードこそ、真の「お宝」であろう。なぜなら、短期間の間にプレス技術が進んで、材質起因のノイズが少なくなったので聴きやすいからである。

最後に、ここで取り上げたアコード・レーベルの付いた『運命』のレコードの変遷は、ごく一時期の可能性が大きいと言うことを述べておきたい。また、このレーベルの変遷は、『運命』に限るのかもしれないとも言える。というのは、同じフラットの形状をしたアコードでも、他のアーティストのレコードでは、レーベルの大きさがごく小さいものや、より初期のプレスと思われるレコードに、「枠無し」レーベルが付いているのもあるからだ。同じ工場内でも、製造ラインが幾つかあったり、複数のプレスの機械を少しずつ新しいのに交換した可能性もあるので、レコードの形状やレーベル・デザインだけでは、どれが古いプレスかは確実な判断が難しいであろう。ただ、アコードの場合、レコードの形状やレーベル・デザインが変わったとしても、一定期間は音の良さが持続していて質の良いレコードが作られたということが、音を聴いて分かったことである。

写真:レニングラード・プレスの変遷(レコードの重さ)
´大33白地に緑(182g)
ぢ33黄色地に緑(190g)
キΕ▲魁璽瓢鯵冢箸犯昭?箸△(175g)
Л┘▲魁璽瓢鯵冢箸里澆△(182g)
アコード枠無し(179g, 162g & 180g)