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33D-05800/1 ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
(1943年6月27-30日の時期 旧フィルハーモニーでの放送用セッション録音)

大戦中の『運命』について、モスクワとレニングラード、リガの3カ所でオールド・メロディアの音質良好なレコードが製造された。それぞれで音の作りが違うが、同じ場所の工場での音の傾向は全く同じである。レコードの個体差は、元になったテープの音を、いかに材質起因の雑音が少ないか、また、いかにテープの音に近い生々しい音で再現するかである。

レーベルに色々なヴァリエーションがあるレニングラード・プレスに比べると、モスクワ・プレスについては、余り大きな変化がなかった。ただ良く注意してみると、同じ水色聖火(松明またはトーチ)レーベルでも字体がぼやけているのと、くっきりしているのがある。横ラインの上のレコード回転数などを記した部分は、前者は斜体になっている。このレーベルには、「サンプル」スタンプがあるので、このロットの中では最初にプレスされた中の1枚と言うことである。レコードの形状にも違いがあり、前者のはレーベル付近が平らだが、後者はその部分が盛り上がっているので、プレスした機械も違うようだ。聖火レーベルの前にプレスされた灯台レーベルはレーベル付近が平らなので、平らな方が、より古いプレスと考えられる。尚、斜体文字のレーベルが付いたレコードには、レーベル内の円形の大きさから、両者の中間の特徴を持つレコードもある。

<モスクワ・プレス水色大聖火レーベルのレコード形状の変遷>
.譟璽戰詆婉瓩フラットでレーベル内の円直径が大きい
▲譟璽戰詆婉瓩盛り上がっている
レーベル内の円直径が小さい

ところで、手元の灯台レーベルのレコードは、何とVSG(All Union Record Studio)のジャケットに入っている。灯台レーベルには、レーベルに使われた紙の質が良くて水色がはっきりしているのと、紙質が悪くてくすんだ水色のがある。VSGはジャケットなどが高級仕様に作られていることが多いので、レーベルの紙質が良くて水色がはっきりしているこのレコードは、VSG仕様ではないかと思われる。

ジャケットについてだが、市場に出回っているレコードの遭遇率から考えると、モスクワ・プレスのレコードの方が、レニングラード・プレスよりも数が多いと考えられるが、この『運命』について、絵や曲名と演奏者名が入った「専用ジャケット」は、モスクワ・プレスの方が少ないようである。大抵は、レコードの内容についての記載が一切無い「共通ジャケット」に入っている。

肝心の音については、大差は無い。ただし、強いて言うならば、この灯台レーベルの方が、水色大聖火よりも材質起因のノイズが少なく、ディテイルがはっきりとしている。レコードの形状が異なる3枚の水色大聖火については、音に関しては全く同じである。同じモスクワのもう少し後のプレスであるピンク・ダブルレターGost-61は、材質起因のノイズがほとんど無くなって聴きやすいのが第一印象である。音自体は水色大聖火と大きな差は無いが、ピンク・レーベルは、若干、マスターテープからの距離感が増したような感じがする。それでも、オールド・メロディア特有の鮮烈感は、まだ残っている。

モスクワ・プレスを何枚か聴いた後で、レニングラード・プレスのアコードを聴いた最初の印象は、ホールの空間が感じられる点で、明らかにどのモスクワ・プレスよりも音が良いということだ。管楽器の音の伸びも良く、迫力が増した感じがする。

さらに、最も希少価値があるリガ・プレスを聴いてみた。どのレコードよりも重量が大きいと思ったので、実際に計量してみると、2枚の内の1枚は、やはり一番重たくて252gもあった。恐らく、中に鉄の板が入っているのであろう。低音がよりしっかりとしていて、ディテイルが一番はっきりしている。例えば、第3楽章から第4楽章に至る弱音部分で聞こえる楽器の音以外の雑音が、いちばんはっきりしている。入手の機会は、灯台が最も少なかったが、同じく希少性があるレコードでも、実力の伴ったリガは、やはりフルトヴェングラーの全レコードの中でもトップ中のトップ・アイテムといえる。

最後に、伝説が一人歩きしているようなVSGについてだが、「必ずしも圧倒的な音の良さを体験できるレコードではない」というのが、フルトヴェングラー以外のオールド・メロディアを聴いた経験での結論である。確かに、フルトヴェングラーのVSGは2種類しか聴いたことがないが、他のアーティストのVSGを何枚も聴いてきた。しかしながら、オールド・メロディアVSGを聴く限りでは、特別に変わった製造をしたとは思わない。ただ、ロシアの友人に聞くと、「1957年に始まって、最初のマトリックスがVSGで数が少ない。ジャケットも素晴らしく、入手が困難である」とのこと。確かに、音を聞くと、溝の状態が良いと思う事が多い。その工場で作られた、より良いプレスのレコードに出会える確率が高いのがVSGと考えている。それよりももっと音を左右するのは、.廛譽垢上手く行っているかと▲譽魁璽匹両?屐↓どこの工場でプレスされたかである。『運命』については、リガかレニングラードで作られたレコードで状態が良ければ、ベストである。この指揮者のオールド・メロディアについては、それぞれの録音によって、どこの工場でプレスされたのが良いかは異なる。ただ、そういう情報は、業者やマニアは公開したがらないので、基本的には自分で確かめるしかない。


写真:モスクワ・プレスの変遷(レコードの重さ)
´灯台(219g)、VSGジャケット付き
た綽大聖火斜体文字「テスト・プレス」(222g)、聖火盤によく使われている共通ジャケット
キ水色大聖火斜体文字(200g)、意外に少ない演奏者名入り「専用ジャケット」
Л┸綽大聖火(211g)、聖火盤によく使われている共通ジャケット
リガ(252g & 200g)は、見た目も重さもレコードの作りが全く違って「王者」の風格があるし、音も素晴らしい。